【社説②】:共同親権の導入 「子の利益」確保を最優先に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:共同親権の導入 「子の利益」確保を最優先に
離婚して夫婦関係を解消したとしても、親であることに変わりはない。子供の利益を損なうことがないよう、制度や環境を整える必要がある。
離婚後も父母の双方が親権を持つ「共同親権」の導入に向けて、政府が今国会に民法改正案を提出する見通しとなった。
現行の民法は、離婚した夫婦のどちらか一方が親権を持つ「単独親権」を定めている。そのため、親権のない親が子育てに関われないという批判があった。
新しい制度では、これを見直し、父母が離婚する際、共同親権にするか、単独親権にするかを話し合って決めるようにする。
親権は、親が子供の世話や教育、財産管理を行う権利で、義務でもある。父母がともに養育に向き合い、責任を果たすのは当然だ。
2022年の離婚件数は17万9000件に上る。離婚した夫婦の半数には未成年の子供がいる。子供にとって、別に暮らす親と接点を保ち、愛情を確かめながら成長できる意義は大きいだろう。
ただ、新しい制度に移行する前に、対策を講じておかなければならない課題は少なくない。
離婚には、相手のDV(家庭内暴力)や虐待を原因とするケースがある。加害者が親権を盾に子供たちにつきまとい、被害が続くようなことがあってはならない。
また、子供の暮らしや進路を巡って父母が対立を深めれば、子供に悪影響が及ぶこともある。
こうした場合、家庭裁判所が親権をどうするか判断することになる。家族の事情は様々で、裁判官が親子のあるべき姿を見極めるのは容易ではなかろう。
家裁に多くの案件が持ち込まれることが予想される。体制を拡充し、準備を整えてほしい。
子供の養育費についても新たな仕組みが導入される。
現在は、養育費の取り決めがないまま離婚するケースが多い。国の調査では、母子家庭の6割は受け取ったことがないという。
このため、離婚時の取り決めがなくても養育費を請求できる制度を創設する。支払いが滞った場合、相手の給与などを差し押さえ、養育費を受けられるようにする。
離れて暮らす親が子供と定期的に会う面会交流については、祖父母らの申し立ても可能になる。これらを着実に運用してほしい。
離婚した夫婦の感情的なもつれで、子供が不利益を被るのは理不尽だ。親権や養育費、面会交流は、子供のためにある制度だと周知することが欠かせない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月22日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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