《社説①・12.03》:年収の壁撤廃論議 「主婦年金」見直す契機に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.03》:年収の壁撤廃論議 「主婦年金」見直す契機に
専業主婦が多かった時代の年金制度は、そろそろ見直す時期に来ているのではないか。
厚生労働省が、パートなど短時間労働者に厚生年金の保険料負担が生じる「年収106万円の壁」を撤廃する方向で調整している。
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従業員50人超の企業で週20時間以上働き、年収が約106万円以上ある人は厚生年金に加入しなければならない。そのため、「働き控え」が生じている。
厚労省は、厚生年金への加入要件のうち収入と企業規模を撤廃して、壁を意識せずに働けるようにする考えだ。
加入者は、保険料を支払わなければならないものの、老後の保障が手厚くなるメリットがある。
それでも、「週20時間」の要件は残るため、働き控えが十分に解消されない可能性がある。
厚労省は、労働者が納めるべき保険料の一部を企業が肩代わりできる案を示している。
人材を確保したい企業に経営努力を求める形だが、体力のない企業にとっては、新たな負担になりかねない。
一方、厚生年金の加入対象にならない事業所などの場合、年収が130万円を超えるとサラリーマンなどの扶養対象から外れ、働き手に国民年金の保険料負担が生じる。「130万円の壁」と呼ばれている。
年収を低く抑えれば、「第3号被保険者」として保険料を払わなくても国民年金を受け取れる。専業主婦などの年金給付を確実にするためにできた制度だ。
3号は、1995年度には1220万人いたが、共働きが増え、現在は半分近くまで減った。働く女性に不公平感が強まるとともに、女性の就労を妨げる弊害も指摘され、労使双方から廃止を求める意見が出ている。
厚労省は、厚生年金への加入者を増やすことで、3号の該当者を減らそうとしている。だが、これでは抜本的な解決にはならない。廃止を含めて検討すべきだ。
ただし、病気や育児、介護などで働けない人もいる。仮に廃止するとしても、この人たちの老後を支える仕組みを構築することが不可欠である。
社会の変化に即した制度のあり方を議論しなければならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月03日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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