【社説・12.23】:与党税制大綱 国民目線で議論すべきだ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.23】:与党税制大綱 国民目線で議論すべきだ
自民、公明両党は2025年度の与党税制改正大綱を決定した。所得税が生じる「年収103万円の壁」については、123万円に引き上げることを明記した。大学生年代の子を扶養する親の税負担を軽減する特定扶養控除も、子の年収制限を103万円から150万円に引き上げるなど、現役世代を意識した減税策が並んだ。
手取り増につながる「年収の壁」の引き上げは一定評価できよう。しかし、効果は限定的であり、個人消費の下支えになるかは不透明だ。物価高騰が続く中、社会保険料の負担も増している。社会保険料とも合わせた抜本的な税制改革を進める必要がある。
「年収の壁」の引き上げ幅を巡り、物価上昇を根拠とする与党に対し、最低賃金の上昇率を根拠に178万円を主張する国民民主との間で協議は難航したが、大綱には自公国3党幹事長による「178万円を目指して、来年から引き上げる」との合意内容を記載、交渉決裂を回避した。
これまでの協議では、それぞれが主張する数字が独り歩きし、引き上げによる効果や財源についての議論は十分だったとは言えまい。
税収が5年連続で過去最高を更新すると見込まれる中、長引く物価高騰で低所得世帯を中心に家計の負担は増している。一方で財政への影響も考慮しなければならない。
与党にとって、予算案審議を含め衆院での野党の協力は欠かせず、野党にとってはそれぞれの政策を与党にのませることも可能になろう。であればこそ、与野党には国民目線に立った責任ある議論が求められる。開かれた議論を重ねることで、国民の理解もさらに深まるのではないか。
ガソリン税に上乗せされている暫定税率では自公国3党は「廃止する」との合意文書をまとめたが、実施時期は未定だ。車を保有している世帯だけでなく、物流などにとっても大きな経済効果が生まれる。早急に結論をまとめてほしい。
税制大綱では、防衛力強化の財源とする3税のうち法人税とたばこ税は、26年4月から引き上げるとしたが、所得税は開始時期の決定を先送りした。国民の反発を招くとの懸念があったためとみられる。
政府は23~27年度の5年間で必要な防衛費を43兆円程度と定めた。政治的な理由で所得増税が先送りされるなら、巨額な防衛費の根拠について疑問が生じる。
共同通信の23年5月の全国世論調査では、防衛力強化のための増税を「支持しない」とする回答は80%に上っている。国民負担を見渡す中で、巨額な防衛増税が、果たして優先課題と言えるだろうか。敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を含む防衛力の強化は、かえって周辺諸国との緊張を高めかねない。防衛増税の必要性を与野党で改めて議論し、少子化や物価高対策に充てるよう見直すべきだ。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月23日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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