【産経抄・12.31】:大つごもりに救いのない話は似合わない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・12.31】:大つごもりに救いのない話は似合わない
今年で五千円札の肖像の役目を終えた明治の文豪、樋口一葉は、24歳の若さでこの世を去った。その直前のいわゆる「奇跡の14カ月」に次々と名作を完成させた。そのひとつが『大つごもり』、大晦日(みそか)の別名である。今井正監督が映画にしており、冬休みに図書館でDVDを見つけた。
樋口一葉(台東区立一葉記念館提供)
▼久我美子さんが演じるヒロインのお峰は、貸家を百軒も所有する金持ちの家の女中である。大恩ある伯父が借金を背負い、年を越すためには2円が必要だった。現在なら5万円ほどになる。奥さんに給料の前借を懇願するも拒絶される。大つごもり、切羽詰まったお峰は、硯箱(すずりばこ)の引き出しから2円を盗み出す。露見したら舌をかみ切る覚悟だった。
▼10代から母親と妹との3人の暮らしを支えていた一葉は、貧乏の辛(つら)さが身に染みていた。華族や政治家の妻や娘が通う歌塾「萩(はぎ)の舎(や)」にも出入りしていたから、金満家の性癖も知っていた。『樋口一葉』(小野芙紗子著)によると、「萩の舎」で2円が紛失し一葉が疑われる出来事もあったらしい。
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元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】 2024年12月31日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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