【総務省】:放送法の「政治的公平」を巡る文書を公開 何が問題なのか 高市早苗氏が「捏造」という記述とは【更新】
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【総務省】:放送法の「政治的公平」を巡る文書を公開 何が問題なのか 高市早苗氏が「捏造」という記述とは【更新】
総務省は7日、立憲民主党の小西洋之参院議員が公表した放送法の「政治的公平」の解釈を巡る78ページの文書について、内部文書であることを認め、公表した。
総務省が7日に公表した「政治的公平」に関する行政文書のコピー。「取扱厳重注意」と記されている
文書には、2014~15年に安倍政権の礒崎陽輔首相補佐官(当時)が「政治的公平」の解釈などの説明を総務省に問い合わせてから、高市早苗総務相(当時)が従来の政府見解を事実上見直すような発言をするまでの経緯がまとめられている。
礒崎氏はツイッターで「従来の政府解釈では分かりにくいので、補充的説明をしてはどうかと意見した」ことを認め、高市氏は自らに関する4枚の文書は「捏造」と主張している。礒崎氏の発言を中心に文書のポイントをまとめた。(デジタル編集部)※2023年3月9日午後9:00に内容を更新しました。
政治的公平に関する従来の政府解釈 放送法4条で、放送事業者は番組編集にあたり「政治的に公平であること」が求められている。「政治的公平」とは①政治的な問題を取り扱う放送番組の編集に当たっては、不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく、放送番組全体としてバランスのとれたものであること②その判断にあたっては、一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断することーとしている。
公開された文書によると、礒崎氏は、番組全体ではなく、一つの番組でも「政治的公平」かどうか判断すべきだと主張していた。(同氏の発言を文書から一部抜粋)
(2014年11月28日)
・これまで国会答弁を含めて長年にわたり積み上げてきた放送法の解釈をおかしいというつもりもない。他方、この解釈が全ての場合を言い尽くしているかというとそうでもないのではないか、というのが自分の問題意識。
・「全体でみる」「総合的に見る」というのが総務省の答弁となっているが、これは逃げるための理屈になっているのではないか。そこは逃げてはいけないのではないか。
・一つの番組でも明らかにおかしい場合があるのではないかということ。今までの運用を頭から否定するつもりはないが、昭和39年の国会答弁にもあるとおり、絶対おかしい番組、極端な事例というのがあるのではないか。これについても考えて欲しい。有権解釈権は総務省にあるのだから、放送法の解釈としてもう少し説明できるようにしないといけないのではないか。
(12月18日)
・番組全体でのバランスの説明責任はどこにあるのか。「番組全体でどうバランスを取っているのか問われれば、放送事業者が責任を持って答えるべきものと考えます」というような答弁はできないものか。
・例えばコメンテーターが「明日は自民党に投票しましょう」と言っても総務省は「番組全体で見て判断する」と言うのか。反対する考え方には一切触れず一党一派にのみ偏る番組といった極端な事例について、もう少し考えてみてほしい。
(12月25日)
・国民の意見が分かれるような課題について、ある番組で一方の主張のみを放送した場合に、他の番組で他の主張について放送していれば政治的公平性が保たれている、くらいのことは言えないのか。
・「国民の意見が二分される問題について、一方の主張をまったく放送せず、もう一方の見解に加担する番組を執拗に繰り広げるような番組」は一つの 番組として政治的公平の観点から番組準則違反にならないのか。それはいくらなんでもおかしいだろう。他の番組とのバランスで判断されることは分かっていると 前から言っている。一つの番組だけでは「どんなに極端な内容であっても政治的公平の観点では違反にならない」と国会で答弁するのか。
礒崎氏は2015年1月13日、従来の「政治的公平」を巡る政府見解の問題点を示すとともに、国会質疑などにおける解釈についての補完的な説明を盛り込んだ私案を総務省に示した。
【問題点】
① これまで、「一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する」との答弁に終始し、どのような番組編集にすれば放送事業者の番組全体を見て「政治的に公平である」と判断されるのか、具体的な基準を示してこなかった。
② 同様に、「政治的に公平である」ことの説明責任の所在についても、明確に示してこなかった。
③ 放送事業者の番組全体を見なくても、一つの番組だけを見たときに、どのように考えても「政治的に公平であること」に反する極端な場合が実際にあり得るが、このことについて政府の考え方を示してこなかった。
【 国会質疑などにおける解釈について補充的説明】
① 例えば、ある時間帯で総理の記者会見のみを放送したとしても、後のニュースの時間に野党党首のそれに対する意見を取り上げている場合のように、国論を二分するような政治的課題について、ある番組で一方の政治的見解のみを取り上げて放送した場合であっても、他の番組で他の政治的見解を取り上げて放送しているような場合は、放送事業者の番組全体として政治的公平を確保しているものと認められる。
② 政治的公平の観点から番組編集の考え方について社会的に問われた場合には、放送事業者において、当該事業者の番組全体として政治的公平を確保していることについて、国民に対して説明する必要がある。
③ 一つの番組のみでも、次のような極端な場合においては、「政治的公平」を欠き、放送番組準則に抵触することとなる。
・選挙期間中又はそれに近接する期間において、特定の候補者や候補予定者のみを殊更に取り上げて放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合
・国論を二分するような政治的課題について、ある番組の中で、一方の政治的見解を取り上げず、他の政治的見解のみを取り上げて執拗に繰り返した場合のように、当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合
礒崎氏側と総務省は、礒崎氏の私案についてその後複数回議論し修正を重ね、それをもとに2月13日、総務省幹部が高市早苗総務相に報告。高市氏は同日付の「高市大臣レク結果(政治的公平について)」と題された文書をはじめ、自らに関する計4ページ分は「捏造」と主張している。
◆高市早苗氏が「捏造」と主張する文書中の発言(一部抜粋)
・「放送事業者の番組全体で」みるというのはどういう考え方なのか。
・そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある?どの番組も「極端」な印象。
・苦しくない答弁の形にするか、それとも民放相手に徹底抗戦するか。
・官邸には「総務大臣は準備をしておきます」と伝えてください。補佐官が総理に説明した際の総理の回答についてはきちんと情報を取ってください。総理も思いがあるでしょうから、ゴーサインが出るのではないかと思う。
◆山田真貴子首相秘書官は「言論弾圧」と問題視
2月18日、総務省幹部が当時の山田真貴子首相秘書官(総務省出身)に礒崎氏とのやりとりの経過を説明したところ、山田氏は「放送法の根幹に関わる話」と強い懸念を示したとされる。文書中の山田氏の発言は以下の通り。(抜粋)
・今回の整理は法制局に相談しているのか?今まで「番組全体で」としてきたものに 「個別の番組」の(政治的公平の)整理を行うのであれば、放送法の根幹に関わる話ではないか。本来であれば審議会等をきちんと回した上で行うか、そうでなければ(放送)法改正となる話ではないのか。
・礒崎補佐官は官邸内で影響力はない。総務省としてここまで丁寧にお付き合いする必要があるのか疑問。
・党がやっているうちはいいだろうし、それなりの効果もあったのだろうが、政府がこんなことしてどうするつもりなのか。礒崎補佐官はそれを狙っているんだろうが、どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか。
・政府として国会でこういう議論をすること自体が問題。新聞・民放、野党に格好の攻撃材料。自分(山田秘書官)の担当(メディア担当)の立場でいえば、総理はよくテレビに取り上げてもらっており、せっかく上手くいっているものを民主党が岡田代表の出演時間が足りない等と言い出したら困る。民主党だけでなく、どこのメディアも(政治的公平が確保されているか検証する意味で)総理が出演している時間を計り出すのではないか。
・今回の件は民放を攻める形になっているが、結果的に官邸に「ブーメラン」として返ってくる話であり、官邸にとってマイナスな話。
◆安倍首相(当時)は「意外と前向きな反応」
3月5日、礒崎氏らが安倍首相に説明。山田秘書官から総務省幹部への連絡によると、山田氏らが懸念を説明すると「意外と前向きな反応」が返ってきたという。山田氏からの連絡とされる文書中の安倍首相の主な発言は以下の通り。
・ 政治的公平という観点からみて、現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべき。
・ 「放送番組全体で見る」とするこれまでの解釈は了解(一応OKと)するが、 極端な例をダメだと言うのは良いのではないか。
・国会答弁をする場は予算委員会ではなく総務委員会とし、総務大臣から答弁してもらえばいいのではないか。
◆高市氏が国会で「一つの番組でも極端な場合は政治的公平を確保しているとは認められない」と答弁
高市氏は5月12日、参院総務委員会で、自民党の藤川政人氏の質問に対して、次のように答弁した。
・放送法第4条第1項第2号の政治的に公平であることに関する政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げましたら、一つの番組のみでも 選挙期間中またはそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間に渡り取り上げる特別番組を放送した場合のように選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては一般論として、 政治的に公平性であることを確保しているとは認められないと考えられます。
・同じように政府のこれまでの解釈の補充的な説明として申し上げますが、一つの番組のみでも 国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、殊更に他の政治的見解のみを取り上げて、それを指示する内容を相当な時間に渡り繰り返す番組を放送した場合のように当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として政治的に公平性であることを確保していることは認められないものと考えます。
政府は高市氏の答弁に関して、従来の「政治的公平」の解釈に何ら変更はなく、これまでの解釈を補充的に説明し、より明確にしたものと説明している。
元稿:東京新聞社 主要ニュース 政治 【話題・高市早苗・経済安全保障担当相・放送法の「政治的公平」に関する総務省の行政文書の真贋(しんがん)について】 2023年03月07日 18:46:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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