【社説①・11.20】:兵庫県知事再選 まず疑惑の解明が先だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.20】:兵庫県知事再選 まず疑惑の解明が先だ
兵庫県知事選はパワハラ疑惑などで県議会で不信任決議を可決されて失職した斎藤元彦前知事が再選された。
斎藤氏は交流サイト(SNS)で、街頭演説の動画などを積極的に配信して支持を広げた。事前の予想を覆しての勝利は、選挙でのSNSの影響力の大きさを改めて示した。
斎藤氏は「民意を得た」と胸を張った。だからといって疑惑がなかったことにはならない。
返り咲いた斎藤氏がまずなすべきことは、選挙でも約束した一連の疑惑解明である。
疑惑を内部告発した県幹部は懲戒処分を受けた後に亡くなった。自殺とみられる。斎藤氏らの対応は告発者を守る公益通報者保護法に反した疑いがある。
パワハラについて、斎藤氏は失職前、県議会の調査特別委員会(百条委員会)で職員への叱責(しっせき)などを認めた。
斎藤氏は百条委や県設置の第三者委員会の調査に引き続き協力し、県職員や議会、市町村の信頼を取り戻す必要がある。それが県政正常化への第一歩だ。
斎藤氏は失職後、1人で駅前に立ち、おわびから始めた。そこからSNSを通じた支援が広がった。陣営には数百人のボランティアが集まり、演説の様子などを投稿、拡散していった。
県議会やメディアを「既成勢力」とし斎藤氏が単独で対峙(たいじ)するかのような構図が広まった。
政治団体党首の立花孝志氏は当選を目指さず立候補し加勢した。「マスコミはウソばかり」「斎藤さんは県議にはめられた」などと根拠もなく訴え、ユーチューブへの投稿を続けた。
斎藤氏は呼応するように選挙後半、メディアや議会に矛先を向けた。「メディアの報道が本当に正しいのか。多くの県民がSNSやユーチューブなどで調べている。一部の県議は政局を見て動いている」と主張した。
一連の疑惑を真摯(しんし)に反省しているのか疑わしい。
東京都知事選で約165万票を獲得した石丸伸二氏や、衆院選で躍進した国民民主党も、SNSで大きな流れをつくった。
災害時の情報伝達や、少数派の意見表明の手段としてもSNSは効果を発揮している。
だが、短い言葉や映像で感情に訴えれば、応酬は時に過激化する。兵庫県知事選では演説会場で小競り合いが起きた。
米大統領選で勝利したトランプ前大統領のように、社会の対立と分断をあおる場として使っている実態もある。
21世紀に誕生し、急激に普及したメディアにどう向き合うのか私たち一人一人が問われる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月20日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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