【社説②・11.20】:エネルギー計画 国会論議も反映させよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.20】:エネルギー計画 国会論議も反映させよ
およそ3年ごとに見直されるエネルギー政策の中長期指針「エネルギー基本計画」について、政府の有識者会議が来月にも素案を出す方向だ。
2040年度の電源構成目標を盛り込むとされる。焦点は前政権が積極活用を打ち出した原発の位置づけである。
人工知能(AI)やデータセンターによる電力需要増を見込み、東京電力福島第1原発事故の反省から記してきた「可能な限り原発依存度を低減」を変更することが危惧される。
先の衆院選で与党は過半数割れした。国会論議を反映させず素案をもとに計画を閣議決定してきた従来のプロセス自体が問われることになろう。
原発政策は選挙で明確な争点にならず野党内でも見解は分かれる。だからこそ現時点での拙速な変更は避けるべきだ。
見直し作業は5月から経済産業省の総合資源エネルギー調査会の分科会で進む。
50年に温室効果ガス排出量実質ゼロとの政府目標達成が前提条件だ。現行計画では30年度の電源比率目標を原発20~22%、再生エネ36~38%としている。
分科会では原発拡大を求めたり、脱炭素の点で再エネとともに「クリーンエネルギー」に分類させたりする声もある。委員は産業界や原子力専門家が目立ち、人選の偏りが指摘される。
福島事故後の日本でエネルギー問題は単なる産業政策の枠に収まらない。9月には若者世代3団体から聴取したが長期的な原発活用への意見は分かれた。
世代だけでなく地域や専門分野など多様な意見を反映させる場に変えなければならない。
デジタル化で電力需要は増えよう。だがそれを理由にした原発回帰は安易に過ぎる。
ここ数年節電・省エネで需要減が進んだおかげで、地域差があるものの、政府機関の予測でも30年の需要量が十数年前の水準から急伸するわけではない。
そもそも安全対策や使用済み核燃料処理のコストが負担となり、電力大手は原発新増設に二の足を踏む状態だ。建設費を電気料金に上乗せできるよう政府内で支援案を検討中というが、国民負担増は本末転倒である。
石破茂首相は前政権の原発活用方針に従っている。だが洋上風力や地熱といった再エネは道内など地方が多く電源を抱え、その主力化は首相の唱える地方創生とも合致するはずだ。
野党第1党の立憲民主党は総選挙では現実路線をとった印象もあるが、原発ゼロ実現を綱領に掲げる。対立軸を明確にして国会で議論を深めるべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月20日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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