【社説・12.07】:島根原発再稼働へ 信頼と安全を最優先せねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.07】:島根原発再稼働へ 信頼と安全を最優先せねば
中国電力は、島根原発2号機(島根県松江市)の原子炉をきょう午後に起動させる。
島根2号機は東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)。BWRの再稼働は2011年3月の福島原発事故後では、10月の宮城県の女川原発に次ぐ2例目になる。連続する動きは政府の原発回帰姿勢がいっそう強まった表れと言える。
島根2号機の再稼働は約13年ぶりになる。長年の停止を経ての再稼働には不安も大きい。女川の時には機器トラブルが起きている。3・11を経験した日本にとって、原発の安全対策がおざなりになることは許されない。
島根原発は全国で唯一、県庁所在地に位置する。島根・鳥取両県にまたがる原発30キロ圏内には約45万人もの住民が暮らしている。事故発生時にどこまで円滑に避難誘導ができるのか。見通しが立っているとは言えない。
とりわけ半島部に住む約6万5千人が気がかりだ。能登半島地震では北陸電力志賀原発の半島部の避難路が寸断され、屋内避難して放射線を避ける家屋の多くも被災した。
島根県は空路や海路での避難策も検討しているが、道路網が寸断されれば、住民が支援を受けられる場所までたどり着ける保証はない。半島の南部と離島に2千人超がいる女川と比べても住民ははるかに多く、県や松江市だけで対応するには限界もあろう。
島根県の丸山達也知事は、原発関係に従事する自治体職員の人件費負担を政府に求めているが実現していない。知事が先月の会見で「防災対策・避難対策を、残念ながら政府は大したことだと思ってない」と不満を述べたのも理解できる。避難計画や安全対策に政府は十分な目配りと支援をするのが当然ではないか。
中電は最高11・9メートルの津波に備えた15メートル防波堤や電源喪失に備えたガスタービン発電機を高台に設けた。安全対策は64項目に及び、手を尽くした思いはあるかもしれない。しかし、災害はしばしば想定を上回る。15メートルの防波堤を過信してはならない。
そもそも原発より再生可能エネルギーを推進するべきだろう。中国地方は再エネ事業者に発電制御を求める出力調整が全国の10エリアで3番目に高い。島根2号機再稼働で原発の発電比率が増し、再エネがさらに抑えられる事態になれば本末転倒ではないか。
太陽光と風力の発電設備の出力は5年間で56%も増えているという。安定供給に課題はあるとはいえ再エネだけで電力需要を賄える日もある。
再エネ発電をあえて抑制してまで2号機再稼働を急ぐ必要がどこまであるのか。30年度までにさらに3号機の運転開始も目指す中電の方針に説得力は感じられない。
原発はこれまで、電力の安定供給が経済や暮らしに欠かせないという理屈で推進されてきた。その前提は住民や自治体との信頼関係であることを政府は忘れてはならない。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月07日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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