【社説②・12.25】:泊再稼働審査 幅広い議論なお必要だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.25】:泊再稼働審査 幅広い議論なお必要だ
原子力規制委員会は北海道電力泊原発(後志管内泊村)3号機の再稼働に向けた審査会合で北電の説明をおおむね了承し、11年に及んだ新規制基準の適合性審査を事実上終えた。
北電は電力の安定供給と脱炭素の両立、先端半導体製造を目指すラピダスやデータセンターなど大量の電気を使う顧客の進出で再稼働の必要性が増していると主張する。2027年5~6月の再稼働が目標とされる。
安定供給と脱炭素の両立は欠かせない。だが原発の過酷事故の危険性は東京電力福島第1原発事故で明らかになった。
北電は核燃料運搬船の専用港を泊村内に新設する方針を打ち出し、審査から切り離した。津波対策の安全確認などを後回しにする手法に地元の不安は根強い。道内の有識者には、泊原発敷地内の断層や隆起の評価について疑問の声がある。
海外からも注目される食と観光、再生可能エネルギーによる発展の可能性が広がりつつある北海道に原発は必要なのか。道民の多様な声を踏まえ、なお議論を尽くさなければならない。
審査が長引いた要因には、説明や提出資料などを巡る北電の不手際があった。規制委から地震や津波に関する専門的な人材の不足も指摘された。
規制委は審査効率化のため、これまでの会合の締めくくりに今後の論点を示し、他の電力大手も北電の応援に入った。
こうした対応なくして北電は説明終了にこぎ着けることができただろうか。原発を動かす資格は十分かが問われよう。
新設する方針を示した核燃料運搬船の専用港については、場所を確定して建設を始めるのは再稼働の後になる見込みだ。
鈴木直道知事は北電による説明が不十分とし、新港や陸上輸送の安全性が再稼働の前提になるとの認識を示している。北電には早期の計画策定と納得のいく説明が求められる。
北電は再稼働後に電気料金を下げると繰り返すが、具体的な水準は明らかにしていない。
昨年の本紙世論調査では再稼働容認が増えた。料金が高止まりする中で一定規模の値下げを期待している面があろう。
11年時点で200億~300億円規模としていた安全対策費は5千億円超に膨らんでいる。これに今後造るテロ対策施設の費用は含まれていない。
北電は電気料金を13年から3回値上げした。3号機の再稼働だけで13年の値上げ前の水準に下げるのは難しいとの見方もある。北電はできるだけ早く見通しを示すべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月25日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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