【社説①・11.19】:兵庫知事が再選 「帳消し」とはならない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.19】:兵庫知事が再選 「帳消し」とはならない
一連の騒動は何だったのかと首をひねった人も少なくなかろう。兵庫県知事選で、斎藤元彦前知事が再選を果たした。パワハラ疑惑などに端を発した混乱の末、県民から再び信を得た形だが、疑惑は未解明。これで「帳消し」とはならぬことを肝に銘じ、混乱の収拾と掲げた公約の実現に全力をあげてほしい。
発端は、県の元局長が3月、斎藤氏のパワハラや企業への物品要求などの疑惑を告発したこと。斎藤氏は「うそ八百」と即断し、元局長を処分したため、県議会は対応が不適切として「百条委員会」を設置した。斎藤氏は自身の非を認めず、議会は、百条委が結論を出す前に知事不信任を決議。斎藤氏は失職を選んだ。
出直し選は、県議会や県内の主要な会派、首長が支援する元尼崎市長と、政党や主な組織の支持は得られなかった斎藤氏との一騎打ちの構図に。斎藤氏は県政の混迷を謝罪しつつ、県庁舎の建て替え計画見直しや県立大学の無償化、自身の給与削減など1期3年の実績を強調した。
知名度の高さや「判官びいき」もあったのだろう、斎藤氏への支持はネットから草の根的に広がった。選挙戦略上、交流サイト(SNS)を駆使した訴求力の高さが7月の東京都知事選に続いて証明されたとも言える。
とはいえ、斎藤氏にとって、全会一致で自身に不信任を突きつけた議会との関係改善は並大抵ではなかろう。疑惑を追及する百条委の審議はこれから本格化する見通しで、弁護士で構成する第三者委員会も調査している。信頼回復にはまず、斎藤氏が疑惑の解明に全面的に協力するしかあるまい。
パワハラか否かはともかく、職員を強く叱責(しっせき)する▽物を投げる▽机をたたく▽深夜にチャットで指示する-など、知事の資質に疑問を投げかけられかねない言動の一部は、斎藤氏も認めている。当然のことだが、権力者たるもの、自身でも意識せず、その言葉や態度が高圧的、独善的と受け止められたり、疑いの目を向けられたり、しがちだ。行財政改革の実績や公約が有権者に評価されたのはまぎれもない事実なのだから、選挙戦でみせた真摯(しんし)な姿勢を継続し「災いを転じて福」となしてほしい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月19日 07:35:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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