【社説②】:公立夜間中開校 学ぶ権利支える拠点に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:公立夜間中開校 学ぶ権利支える拠点に
道内初の公立夜間中学校となる札幌市立星友館(せいゆうかん)中がきのう、同市中央区に開校した。
さまざまな理由で学齢期に義務教育を受けられなかった人へ学ぶ機会を提供する場だ。生徒が自己実現を果たす助けとなろう。
開校の意義は大きい。憲法が定めた教育を受ける権利を保障する拠点として支える必要がある。
幅広い年代や出自の70人弱が学びやの門をくぐった。新たな出発を祝福すると同時に、豊かな学校生活となるよう見守りたい。
公立夜間中学は教育機会確保法に基づき、文部科学省が各都道府県と各政令指定都市に最低1校の設置を求めている。星友館など本年度開校の4校を含め、15都道府県に40校を数える。
戦後の混乱期に学ぶ機会を失った高齢者は多く、道内の義務教育未修了者は数千人とされる。
近年は不登校や外国籍の人が増えていることから、幅広い教育機会の提供を求める声が強まり、2016年に同法が成立した。
星友館の新入生は札幌や近郊の10~80代で、バングラデシュなど海外ルーツの人もいる。国語や英語など一般的な中学と同じ教科を夜間に学び、給食も提供される。
入学理由は千差万別だ。健康に不安を抱える人、いじめで通学できなかった人らに加え、開拓農家で重労働に従事した人もいる。
学校側は多様なニーズに応えられるよう準備を進めてきた。
生徒の状況や希望に合わせ、学習内容を小学から中学まで段階に応じて細分化した。日本語習得の支援や数学の手ほどきに力を入れるコースを設けたのも特徴だ。
学校では生徒の自己決定権や多様性を尊重する考えだ。多文化共生が重みを増す時代の要請にかなっており、他校でも参考になろう。今後の実践に期待したい。
一方、通学が継続できるか懸念する生徒は少なくないといい、教職員は丁寧に支えてほしい。
4月入学生は定員120人の半数強にとどまったが、学校側は5月にさらに11人を受け入れるなど柔軟に対応する方針である。
今回の開校を知らない学習希望者が一定程度いよう。行政は広報に一層力を入れてもらいたい。
これまで札幌、旭川、函館、釧路で民間の夜間中が地道な活動を続けてきた。公立校の誕生は大きな一歩だが、広大な道内を1校だけでカバーするのは無理がある。
情報通信技術による遠隔授業の導入に加え、札幌以外での新設や分校の設置も今後の課題だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月20日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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