【社説①】:新電力の経営難 安定供給と競争両立を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:新電力の経営難 安定供給と競争両立を
低料金を売り物にする新電力の倒産や撤退が増えている。
大半は自前の発電設備がなく、ロシアのウクライナ侵攻などで燃料価格が高騰し、卸電力市場での調達価格も上昇しているためだ。
侵攻の状況によっては燃料高が深刻化、長期化する恐れもある。道内の新電力市場に大きな変化はないが、影響は避けられまい。
新電力は公益事業を担っているとの自覚を持ち、調達手段を点検するなどして顧客への供給責任を果たしてもらいたい。
2016年の電力の小売り自由化後、新電力は700社を超え、販売量シェアは2割を占める。
自由化は競争原理の導入で料金を引き下げる狙いがあった。
一定の効果はあったが、経営難の増加は競争を重視するあまり、リスクへの備えが不十分な事業者を参入させてきた結果と言える。
政府は電力自由化を制度面などから検証して、健全な競争と安定供給を両立させる電力市場づくりに一層努めなくてはならない。
帝国データバンクによると、21年度に倒産した新電力は単年度では最多の14社だった。小売り事業撤退を含めると31社に上る。
卸電力市場ではスポット(随時契約)価格だけでなく今後の需給逼迫(ひっぱく)をにらんで先物価格も急騰しており、逆風は強まっている。
新電力は電力の調達先を多様化したり、発電事業者と中長期の契約を結んだりして供給の継続に知恵を絞ってほしい。顧客への迅速な情報開示も不可欠だ。
新電力の値上げや事業停止により、契約先を大手電力に切り替えようとする企業が相次いでいる。
だが経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会によると、北海道と沖縄を除く大手8社は法人向け電力プランの新規契約の一部を事実上停止している。
供給力の余裕が乏しいことなどが理由というが、十分に告知していない会社もある。契約を希望する企業に丁寧に説明すべきだ。
企業は契約を切り替えられなくても、電力の供給を受けることができる。法律で大手の送配電会社に一定価格での「最終保障供給」を義務付けているためだ。
ところが卸電力の価格高騰で小売会社が提示する価格も上昇している。本来はセーフティーネットとして機能すべき最終保障供給の価格の方が安くなるという不正常な状態が生じている。
政府は燃料高の中長期化も見据えて、電力供給のあり方を改善していく必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月20日 05:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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