【社説①】:ウイグル族弾圧 「内政干渉」は通用せぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ウイグル族弾圧 「内政干渉」は通用せぬ
欧米諸国が、ウイグル族に対する中国の人権侵害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と非難し、制裁に踏み切った。中国は「内政干渉」と反発しているが、その主張は的外れであり、通用しない。
米国、欧州連合(EU)、英国、カナダが先月、中国によるウイグル族弾圧を非難し、人権侵害を理由に、新疆ウイグル自治区責任者の資産凍結などの対中制裁に踏み切った。
さらに米国務省は先月三十日、二〇二〇年版の世界の人権状況をまとめた報告書を公表。バイデン政権で初の報告書は、同自治区で「恣意的(しいてき)な施設への収容や拷問、強制的な避妊・中絶などの犯罪が続いている」と糾弾した。
強権的な権威主義の虜囚になっている人々を苦境から救わねばならぬ。「深刻な懸念」の表明にとどまる日本も含め、民主主義陣営の結束した行動が求められる。
米報告書などの批判に対し、残念だが、中国外務省報道局長は先月三十一日の記者会見で「世紀のウソ。中国人民への最大限の侮辱だ」と猛反発した。
もし、中国がそうした主張を続けるのであれば、各国が求める国連や専門家による現地調査をむしろ積極的に受け入れて、それを証明すべきであろう。
中国は一七年ごろ、同自治区に収容施設を造り、百万人余のウイグル族に漢族との同化政策を強制してきたとされる。
「完全な虚偽」と反論してきた中国は一八年に一転、施設の存在を認め、「過激主義を防ぐ措置」として中国語や思想の教育を施していると釈明した。中国のウイグル族統治の闇は深すぎると言わざるをえない。
中国が重視する国連憲章は基本的人権の尊重をうたう。人権尊重や個人の自由は普遍的な価値でもある。中国が「内政干渉」を理由に国際社会からの批判をはねつけ続けるような態度は通用しない。
李克強首相はかつて全国人民代表大会(国会)で「わが国は多民族からなる統一国家で、各民族はみな中華民族の平等な一員である」と演説した。
しかし、ウイグル族だけでなく、チベット族やモンゴル族などへの弾圧の実態は、「平等」のかけ声とはかけ離れたものである。
もしも、民族固有の伝統や文化を踏みつけるような弾圧を続けるなら、少数民族の心は完全に中国から離反する。それは、中国にとって悪夢ともいえる分離独立運動につながりかねない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年04月03日 06:40:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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