【社説①・03.07】:中国の全人代 強気の目標に潜むほころび
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.07】:中国の全人代 強気の目標に潜むほころび
米国のトランプ政権からの圧力をかわしつつ、経済と軍事の両面で足場固めを急ぎ、国際的な影響力の向上を図る、というのが中国の習近平政権の戦略なのだろう。
中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)で、李強首相が政府活動報告を行った。今年の国内総生産(GDP)の成長率目標を「5%前後」とし、3年連続で据え置いた。
長引く不動産不況に加え、トランプ政権が1か月半に2度、計20%の追加関税を発動するなど米側の圧力が強まる中で、強気の目標設定と言える。
米国との貿易摩擦が激化すれば、中国経済を 牽引 してきた外需が深刻な打撃を受けるのは避けられない。こうした状況下で、李氏は内需拡大を最重要視し、消費を喚起していく姿勢を強調した。
償還までの期間が長い超長期特別国債の規模を拡大し、一部を自動車や家電などの買い替え支援にあてる方針という。
だが、景気の停滞で、消費者の節約志向は高まっている。治安も悪化し、各地で無差別殺傷事件が起きている。
経済の発展と社会の安定の両立という目標を達成するには、目先の景気刺激策だけでなく、医療や年金など社会保障制度を充実させることが不可欠ではないか。
しかし、軍事予算案には過去最高の約36兆7600億円が計上され、成長率目標を上回る前年比7・2%増の伸び率となった。人工知能(AI)などを利用した「新たな質の戦闘力」を強化する。
一方、中国軍内では汚職が 蔓延 し、高官の摘発が相次いでいる。軍拡路線の内部で一体何が起きているのか。日本周辺の安全保障環境に影響を与える中国軍の動向に引き続き注視が欠かせない。
活動報告では、中国外交の成果として「真の多国間主義を堅持し、地球規模の課題への対応と地域紛争の解決に役割を果たした」と主張した。中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」を通じ、対外協力を推進する方針も示した。
「米国第一」を掲げ、新興・途上国への経済援助の停止を表明したトランプ政権との違いを際立たせ、国際社会における求心力を高めようとする狙いは明らかだ。
報告では、米国を念頭に「覇権主義・強権政治」に反対すると明記した。だが、中国が台湾を軍事的に威嚇していることや、ウクライナを侵略するロシアを非難しないことについても、多くの国が強権的だと受け止めている。
元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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