【産経抄・07.12】:怖くて吹けぬ警笛、兵庫県庁の苦い教訓
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【産経抄・07.12】:怖くて吹けぬ警笛、兵庫県庁の苦い教訓
学校体育や競技スポーツなどで使うホイッスルには、大きく分けて2種類ある。
▼中に入った玉を息で転がし、強弱をつけた音を出すもの。複数の共鳴管を震わせ、歓声の中でも響く大音量を出すもの。ホイッスルの形が時と場合に応じて異なることを、大手スポーツ用具メーカーのウェブサイトで知った。体育の授業で先生が鳴らす小気味よい「ピッ」は、玉を転がすタイプらしい。
▼英語に「ホイッスル・ブロワー」という表現がある。直訳すると「警笛を吹く人」、転じて「内部告発者」の意味になる。なるほど、組織の非を鳴らす警笛の吹き方もさまざまだろう。実名での訴えがあり、組織からの懲罰(報復)を恐れた匿名の声もある。組織が法律に沿って設けた通報窓口に駆け込む人もいれば、メディアなど外部の力をたのんだ告発だってある。
▼いずれにしても、不正をただそうとする告発者は保護の対象になる。兵庫県庁の事案はどうか。斎藤元彦知事のパワハラなど複数の疑惑を告発した元幹部職員が、「噓八百」と糾弾された上、懲戒処分を受けた。処分の根拠とされる「内部調査」は、中立性が疑問視されている。より強い調査権限を持つ百条委員会が、曲折の末に設置された。その経緯も理解に苦しむ。
▼告発の一部については、その後、内容を裏付ける報道もなされている。元幹部は百条委での証言を前に死亡した。自殺とみられている。責任を問われた知事は「私自身が生まれ変わっていい県政を」と述べた。問われているのは、知事をはじめとする県の「不正」への感度、事実を追求する姿勢に他ならない。
▼誰もが臆せず警笛を吹ける。そんな風土作りが正常化への一歩だ。真相究明が急がれるのは論をまたない。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【産経抄】 2024年07月12日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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