【社説・11.23】:防衛局中城湾港使用 県は管理者権限発揮せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.23】:防衛局中城湾港使用 県は管理者権限発揮せよ
法や制度を軽視するようなやり方ではないか。意図的であれば、新基地建設計画の正当性はいよいよ失われる。県は港湾管理者の権限を発揮し、国と対峙(たいじ)する必要がある。
米軍普天間飛行場移設に伴う新基地計画で、沖縄防衛局はうるま市与那城の宮城島から運び出した土砂を辺野古に搬出するために中城湾港の岸壁を使用している。
港湾法上、中城湾港は県管理だが、防衛局は今回、港湾整備のため一時的に国が管理する岸壁を使っている。沖縄総合事務局は防衛局が届け出た岸壁使用を認め、20日から防衛局は台船に土砂を運び込む作業を始めた。そのこと自体、その場しのぎの「奇手」との批判を免れない。
それだけではない。沖縄総合事務局は出入港については管理しておらず、手続きをしないまま土砂を載せた台船が出港する可能性があった。22日になって土砂を運搬する業者が県へ入出港届を提出し、受理されたが、結果的に搬出作業開始とは順序が逆になってしまった。
港湾法などとの関係で疑義が生じるような港湾使用はあってはならない。入出港届がなぜ遅れたのか防衛局は説明してほしい。本来の手続きを国が軽んじてはならない。
新基地建設に用いる土砂を積んだトラックの往来が激増すれば、岸壁だけにとどまらず、港湾全体の運用にも関わる。県は港湾管理者として届け出をそのまま受理するのではなく、港湾の運用状況に照らして精査すべきであった。
これは港湾を管理する県など地方公共団体の自治に関わる話である。国策遂行を理由に国が港湾管理者の権限に介入し、港湾運用に混乱が起きるようなことは絶対に避けなければならない。
港湾法は、地方公共団体や港湾に関係する地方公共団体で構成する「港務局」が港湾を管理することを定めている。国は港湾管理者になることはできず、港湾の管理運営に関して地方自治が最大限認められているのである。防衛局がやっていることは県の港湾管理権を侵しかねず、地方自治に反する。
港湾法で港湾管理者を地方公共団体にしたのは、国管理だった港湾や空港が過去の戦争に使用された戦前の反省を含む。港湾管理者である県を素通りして土砂搬出に中城湾港を使う防衛局の手法は過去の反省に背くものだ。
名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は「戦前は国が港湾管理権を一元的に有していたことが戦争遂行を容易にした。その反省を踏まえ、自治体に強い権限を持たせることで、国に歯止めをかける憲法的意味がある」と指摘する。
「台湾有事」を名目に南西シフトを進める政府は民間港湾・空港の軍事利用を進めている。防衛局の中城湾港の使用も全く無関係とは言えない。県は港湾管理者として、港湾の自治に反する動きに厳しく対処すべきだ。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月23日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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