【金口木舌・11.23】:嘉数高台の景色
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・11.23】:嘉数高台の景色
「大切なことは、目に見えないんだよ」。宜野湾市の嘉数高台の展望台から景色を眺めていると、サンテグジュペリの童話「星の王子さま」が頭に浮かんだ
▼米軍普天間飛行場が見える。オスプレイは住宅地に突入するかのようだ。「世界一危険」は一目瞭然。修学旅行生、政治家、米兵、さまざまな立場の人が訪れる。何を心に刻むのだろう
▼普天間飛行場の向こうに読谷村の渡具知の浜が見える。79年前、この浜から米軍が上陸した。米軍は南進し、嘉数で最初の激戦を迎える。日本軍は爆雷を持って戦車に突撃する肉弾戦で対抗し、多くの命が失われた
▼米軍は戦中から基地を造成し、戦後も「銃剣とブルドーザー」で拡張した。日本本土の反基地運動で海兵隊が移駐し、普天間の機能は強化された。返還が決まっても移設先は県内。返還がかなわぬ間に墜落事故が起きた
▼目に見えぬ苦難の歴史と、眼前の不条理な現実が重なる。同じ景色を見た著名な実業家が「住民の危険よりジュゴン」と新基地反対運動を揶揄(やゆ)したことに胸がえぐられる。きょうもあすも、多くの人が嘉数高台を訪れる。どうか、心で景色を見てほしい。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2024年11月23日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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