【社説・08.31】:知事のパワハラ/無自覚な言動を猛省せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・08.31】:知事のパワハラ/無自覚な言動を猛省せよ
パワハラなどの疑惑を告発された兵庫県の斎藤元彦知事がきのう、県議会の調査特別委員会(百条委員会)に初めて出席し、証言した。
この日はパワハラ疑惑についての質疑が交わされた。知事は反省や陳謝の弁は述べたが、告発内容については職員の証言と認識に違いもみられた。議員の追及も甘さは否めず、疑念が晴れたとは言い難い。
元西播磨県民局長の男性は3月、知事のパワハラや企業からの贈答品受領など7項目の疑惑を記した文書を作成し、報道機関などに送った。4月には県の公益通報窓口にも同じ内容を通報した。
これに対し、知事は文書を「うそ八百」と非難して男性の役職を解き、内部調査だけで懲戒処分に踏み切った。男性は7月に死亡した。
告発文書では、知事のパワハラについて「県立考古博物館で公用車を降りて20メートルほど歩かされ、出迎えた職員らを怒鳴り散らした」などと記していた。現場にいた幹部職員はこの日、知事に先立って証言し、「理不尽な叱責(しっせき)を受けたという思いが今もある」と述べた。
これに対し知事は「大声は出したが、車の進入禁止エリアと認識しておらず、当時の対応としては適切だった」などと反論した。
百条委によると、職員アンケートでは約4割がパワハラを見聞きしたと回答している。23日の県職員への尋問では、知事が厳しく叱責したり、最高幹部に文具を投げつけたりしたなどの証言が出たとされる。
深夜や休日に会議用アプリのチャットで業務を指示するメッセージを繰り返し送ったとの指摘について知事は「やり過ぎた面はある。反省している」と答えたが、一連の言動がパワハラにあたるかどうかは「百条委の判断」と述べるにとどめた。
パワハラは深刻な人権侵害である。知事自身は認めていないが、多くの職員がその言動に精神的負担を感じていたのは明らかだ。証言はその点に無自覚というほかなく、猛省を求めたい。
この問題では、男性の処分が告発者の保護をうたう公益通報者保護法に違反する可能性があるとして、懲戒処分を先行した県の対応が問題視されている。議員から処分が妥当かと問われた知事は「真実相当性の確認できない文書で、適切に対応した」と改めて主張した。
長引く県政の混乱は県民生活に大きな影響を及ぼす。辞職を促す声が上がる中、知事は続投意向を崩さない。しかし現状のままでは、事態の打開は見込めない。疑惑と責任から逃げず、進んで真実を明らかにするべきだ。百条委もさらに調査を尽くしてもらいたい。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年08月31日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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