【社説・01.01】:2025年を迎えて 民主・自治・平和 再確認を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.01】:2025年を迎えて 民主・自治・平和 再確認を
私たちの目の前にある課題を乗り越える確かな足場をつくる年でありたい。そのためにも戦後築き上げてきた民主主義や地方自治、平和の価値を再確認する必要がある。
2025年の幕が開けた。爽やかな気持ちで新たな年を迎えたい。そして、困難から逃げず、真正面から向き合う勇気を持ちたい。
今年は「戦後80年」の節目の年である。沖縄の島々が地上戦と猛爆にさらされ、多くの県民が犠牲となった年から今日までの歩みを振り返り、望ましい沖縄の姿を見定める年としたい。沖縄戦と戦後体験は、未来に向かって県民が歩む時の道標となる。
戦後日本の精神的支柱をなしてきた価値が揺らいでいる。民主主義と地方自治、平和主義が危機にひんしているのだ。深刻な社会の分断も進んでいる。それは沖縄に関わる出来事に表れている。
民主主義と地方自治の危機は、米軍普天間飛行場返還に伴う辺野古新基地建設を強行する政府の姿勢に象徴される。
新基地建設にあらがう沖縄の民意や地方公共団体が持つ権限を無視して美ら海に土砂を投入する行為は、民主主義と地方自治を踏みにじるものに他ならない。
沖縄の島々で急速に進む自衛隊増強は沖縄戦体験に基づく県民の平和志向に反し、沖縄を再び戦場に見立てるような動きだ。到底受け入れられるものではない。
沖縄は戦後27年間、県民の意思とは関わりなく米統治下に置かれ、日本の施政権から分断された。米統治への抵抗の中で県民は基本的人権と平等、平和主義を規定する日本国憲法の完全適用と「自らのことは自ら決める」という権利の獲得を求めてきた。
この歴史的体験を通じて得られた民主主義と地方自治、平和の理念は今日においても、新基地建設や米軍人による性犯罪など沖縄に横たわる問題と対峙(たいじ)する県民の闘いの中に息づいている。国策や日米同盟を厳しく問う姿勢は日本社会の中でも特異な位置を占めていよう。
半面、政府に対する沖縄の異議申し立てはネット上で悪罵の対象にもなってきた。このような「沖縄ヘイト」によって沖縄内部の亀裂をはらみながら、沖縄と日本の新たな分断が生まれつつあることを見逃すわけにはいかない。
昨年の衆院選や兵庫県知事選にみるように、交流サイト(SNS)が持つ影響力は時として大きな混乱を引き起こし、地域社会の分断を招く。同じような事態が沖縄でも起きかねない。それに打ち勝つためにも自らを律し、ネット上にあふれるさまざまな情報の真偽を見通す心眼が求められている。
新たな年は、分断から融和への道筋を見定める年でもありたい。戦後80年の歩みに学びながら、柔軟な発想と世代を超えた活発な論議で分断を克服しよう。私たちにはその力があると信じる。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月01日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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