【社説②・12.26】:学術会議改革 これで独立性保てるか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.26】:学術会議改革 これで独立性保てるか
日本学術会議の在り方に関する内閣府の有識者懇談会は、国の機関から新法人への移行に向けた最終報告書をまとめた。
国に助言する権限や、国からの財政支援を保障する一方で、活動の透明性を高めるとして、首相が任命する「評価委員会」や監事を置くことを提言した。
これを受け学術会議の光石衛会長は法制化に向けた協議に入る考えを示したが、内部にはなお異論や懸念が残る。政府の介入を許し、独立性を脅かしかねない内容は取り除くべきだ。
そもそも問題は4年前の菅義偉元首相による会員候補6人の任命拒否に端を発している。唐突に始まった組織見直しは論点のすり替えにほかならない。
石破茂首相は問題発覚当初、こうした経緯を疑問視し政府の説明責任を訴えていた。首相就任後はほとんど言及がないが、ここでもまた変節するのか。
任命拒否を撤回し、不透明な経緯を説明するのが筋である。首相は真摯(しんし)に対応すべきだ。
会員選考について報告書は、首相の任命制をやめるとともに客観性を持たせるとして外部有識者による「選考助言委員会」を新設し意見を聴くことを盛り込んだ。投票制も提示した。
懸念されるのは、複数設ける外部監視の仕組みが、学術会議の自主性を縛らないかということだ。特に評価委員や監事は政府が人選するため、結果的にその意向が反映されかねない。
学術会議の総会では報告書について「絶対に認められない」との反論の一方、評価すべきだとの声も出たという。
光石会長も柔軟姿勢に転じたように映るが、夏には「懸念が十分払拭されないなら重大決意をせざるを得ない」と強調していた。主張は貫くべきだろう。
政府・自民党内では、大学の軍民両用研究に反対するなどしてきた学術会議の姿勢に不満があるという。だが、ナショナルアカデミーに求められるのは時の政府と一線を画し、中立公平な立場から直言することだ。
学術会議には、戦前の科学者が軍事研究に動員された経験を反省して作られた歴史があるということを忘れてはならない。
首相は就任前、「学術会議は政権の独占所有物ではない。国の機関は国民のものだから、国民の納得がいくことが必要だ」と述べていた。
政府は来年の通常国会に学術会議の法人化のための法案提出を目指すというが、衆院は少数与党で、野党は国の対応を厳しく批判している。
首相は初心に立ち返り、対応を改めなければならない。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月26日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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