【主張②・12.10】:公取委の立ち入り アマゾンは重くとらえよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.10】:公取委の立ち入り アマゾンは重くとらえよ
圧倒的に強い立場を利用して、取引先に価格引き下げを迫る。世界的な巨大IT企業がこうした行為をしていたとすれば、大きな問題だ。
公正取引委員会がインターネット通販大手「アマゾンジャパン」に対し、独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を実施した。
アマゾンジャパン本社に掲げられたロゴマーク=東京都目黒区
アマゾンが運営する通販サイトに出品した業者に、価格の引き下げを強要した疑いがある。アマゾンが提供する商品発送など代行サービスの利用を強いた疑いも持たれている。
約25兆円の規模に達したネット通販が今後も健全に発展するには、サイトの運営者や利用者だけでなく、出品者も適正な利益を得られることが必要だ。公取委は広く情報を集め、実態解明につなげてほしい。
アマゾンは、小売業者が商品を販売する場として「マーケットプレイス」というサイトを運営している。同じ商品ページに一つだけ、商品が利用者の目につきやすい位置に表示される。この位置を獲得する条件の一つに、アマゾンは「競争力のある価格での出品」と設定しているとされる。
出品者にとって、通販サイトは多くの消費者に商品を届けるために欠かせない販路だ。サイトでの掲載位置によって商品の売れ行きが左右されるだけに、価格引き下げの要求があれば拒みにくい。
通販サイトを運営する強い立場を利用して、出品者に価格引き下げを強要したとすれば、独禁法が禁じる優越的地位の乱用や拘束条件付き取引に当たる可能性がある。要求に応じずに、目立つ位置から外された出品者もいたという。
看過できないのは、公取委によるアマゾンへの立ち入り検査が3回目であることだ。
過去には取り扱う商品を値引き販売し、値引き分の一部を納入業者に負担させたとして、約1400社に総額約20億円を返還するなどの改善策をまとめたこともある。法令違反が疑われる行為を繰り返す企業姿勢は見過ごすことはできない。
公取委は米国本社「アマゾン・コム」が関与した可能性があるとみて調べる方針だ。アマゾンの商慣行は米欧でも問題となっている。公取委は海外当局とも連携してネット通販市場の健全な発展につなげてほしい。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月10日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます