【社説①】:ダイハツ不正 親会社の責任も重大だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ダイハツ不正 親会社の責任も重大だ
車の認証試験を巡るダイハツ工業の品質不正問題は、第三者委員会の報告で新たに174件の不正が明らかになり、国土交通省が同社を立ち入り検査した。
ユーザーの安全を軽視した悪質な行為が、少なくとも30年以上にわたって放置されていた。奥平総一郎社長が認めるように「自動車メーカーの根幹を揺るがす事態」というほかない。親会社トヨタ自動車の責任も重大だ。
トヨタグループでは、昨年から今年にかけて日野自動車や豊田自動織機の品質不正が明らかになっている。世界的ブランドを掲げ、拡大するグループの統治構造は万全だったのか。トヨタの経営陣は改めて検証し直す必要がある。
ダイハツは国内外で生産する全車種の出荷を停止した。国内では相手先ブランドによる生産(OEM)で供給を受けるトヨタ、SUBARU(スバル)、マツダの車も止まり、部品メーカーや販売店への影響も大きい。再開時期は見通せず、長期化が懸念される。
不正の背景として報告書に繰り返し出てくるキーワードが「短期開発」だ。他社よりも大幅に短い期間で新車を送り出すことが差別化要因であり、ダイハツの存在意義として根付いたという。その結果、必要以上に厳しく硬直的な開発スケジュールに従業員が追い込まれ、やむにやまれず不正行為に及んだと第三者委は指摘する。
認証試験は開発の最後の工程でもあり、担当者は「不合格はあり得ない」とのプレッシャーにさらされていた。担当者が相談しようにも管理職は実務に不案内で、現場任せの企業風土だったという。
「まず責められるべきは現場の従業員ではなく、ダイハツの経営幹部だ」とした第三者委の指摘は当然だが、親会社として経営陣に多数の人材を送り込んでいるトヨタの責任にほとんど触れていない点には違和感がある。
不正は2014年以降に増えており、トヨタが小型車を中心にダイハツへの生産委託を増やしていった時期と重なることを考えればなおさらだ。トヨタの中嶋裕樹副社長も「OEM供給車が増えたことが現場の負担を大きくした可能性がある」と述べている。
日本の道路事情に合わせた軽自動車を中心に、ダイハツ車のユーザーは多い。経営体制や企業風土を見直して信頼を取り戻すには、親会社のサポートが欠かせない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年12月25日 06:56:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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