通えないからもし面接に呼ばれても辞退するつもりの応募書類を書き上げた夜、もう少し星組公演のことを語りたい。わたし宝塚愛が復活してから一番気になるのは明日海りおさんなので、紅カールにこんなに気持ちがもっていかれるとは思いませんでした。今すっかり頭の中星だらけ。不思議な読後感ならぬ、観劇後感。紅カールの切なく優しい涙、ショーの三回目のデュエットダンスのトップコンビの、信頼しあい幸せに満ちた表情を思い出すとあたたかい気持ちになれます。ちょっとつらい気持ちにまろやかなミルクティーを注がれてほっとする感じです。36年ぶりの再演、次にまた再演されるのはたぶん何十年も先にまたカールを生きられる役者が現れたらなので自分がこの世にいる間にはもうないだろうなと思います。『Another World』の康次郎さん、紅ゆずるさんの真骨頂だと思いましたがカールもまた真骨頂。素の人間性が垣間見える情にあつい役がお似合いです。この世を旅立つときの心のお土産にまた出会うことができました。
「霧深きエルベのほとり(鴎の歌)
作詞/菊田一夫 作曲/入江薫
鴎よ 翼にのせてゆけ
我が心の吐息を
遠きふるさとの エルベの流れ
霧は深く ため息のごと
岸辺によせる さざ波は
別れし人の睫毛にも似て
いつも ふるえる
鴎よ つたえてよ
我が心 いまも 君を愛す
鴎よ つたえてよ
我が心 いまも 君を愛す」
オープニングとエピローグでフランクフルト号の甲板に立ってカールが歌う「鴎の歌」。言葉が美しいですね。善悪の対立はなく、誰も死なないし、誰も悪くない、切ない心の物語。星組の担当がまわってきたとき、この作品を紅カールで上演したいと劇団にかけあった上田久美子先生の感性と作品の世界観をこわすことなくリリカルに観客に訴えかけてくる演出、すごいなあと思います。すでに書きましたがふわふわの白いドレスを着たマルギットの白い背中をカールが札束で叩く場面、マルギットの妃咲愛里さんの着こなしがとてつもなく可愛くてきれいなので残酷さがいちだんと際立ちました。マルギットの白い背中を客席にみせながら、こういう際まで迫ってくる演出、上田先生ならではと思います。
愛里さんのマルギット、お人形さんのように可愛いですがただ可愛いだけではカールとフロリアンのどちらもマルギットの幸せを願う姿を観客が納得できない、観客が違和感なく物語を受け入れられる、無知ゆえの残酷さをもつと同時に無垢で可憐なマルギット。無知と無垢のバランスが絶妙なマルギット。発声が少し気になるかなあというところはありましたが、こうしてマルギットを体現できる人も希少だろうなと思います。
音波みのりさんが演じるアンゼリカが偶然再会したかつての恋人カールを心配する姿も心に沁みました。カールとマルギットの結婚披露パーティーでは心配そうにカールばかりを見つめていました。夫に内緒でカールに会いにきたアンゼリカに、カールのもとを離れなければならなかった理由を言おうとするアンゼリカの言葉を遮り、「お前が幸せならいいんだよ」ってカールが言う場面もまた切ないものがありました。
カールとは対照的な礼真琴さん演じる知的で紳士なフロリアン。タキシードの着こなしがとてつもなく綺麗なのが彼の頭の良さをより引き立ていましたが心の中は複雑な人に見えました。マルギットが自分と結婚するのがいやだからだと知りながらマルギットを捜し、街中でみつけたマルギットがカールに惹かれている様子をみて二人のために結婚披露パーティーを開くことを提案したり、カールの心情を読み取って代弁しマルギットに兄のように諭したりする姿の本心はどこにあるのだろうと思いました。「マルギット、おきき」。とてつもなく優しい姿が少しこわいようにも感じられました。マルギットの妹シュザンヌにはマルギットへの気持ちを打ち明けますがマルギットには言わない。カールにゆだねようとする。シュザンヌはフロリアンに惹かれていてその気持ちを打ち明ける。なかなか複雑です。カールがフランクフルト号にのって再び航海へと旅立って行ったのと一足違いで港にやってきたマルギットとフロリアン、ふたりの「カール」「カール」と呼ぶ声がこだましながらセリがさがっていき、フランクフルト号のカールが甲板に姿を現すという演出でした。カールの優しい涙があとになって沁みてくる。複雑なのになぜかあったかい気持ちになれる物語。
七海ひろきさん演じる水夫仲間のトビアスが水の上に石を飛ばす場面、客席前方は笑いがおきていました。兄を心配してやってきたカールの妹ベティと結婚式をあげて船を降りることを決意し、「あばよ」と去っていく後ろ姿がかっこよすぎました。身分の同じ二人が結ばれたラストが物語にあたたかい花をそえていました。マルギットとカールをさがすカウフマン警部は天寿光希さん、似合います。ビア祭りの場面では水夫仲間たちと酒場の女たちでカップルができていたようだし、カールのようになりたいと飛び込んできた少年の姿も印象的で、どなたが演じているのだろうと気になりますがなかなか全員は認識しきれないのが残念。目が足りません。
ショー『エストレージャス』は情熱大陸の曲が使われている場面があったみたいですがタカラヅカアレンジでわかりませんでした。そのほかJPOPは聞いたことある気がするけどあまりわからずでした。トップコンビの二回目のデュエットダンスはタンゴ、衣装が舞台でみるとキラキラ、キラキラ、眩しすぎるほどでした。それから客席降りもあり全員が紅さんを見つめながら盛り上がる場面、広い大劇場の舞台も客席もあったかであつい空間になっていました。紅さんが「歌って踊って発散したほうがええでぇ」って言ってくれました。東京ではなく関西にいるのだと実感。トップコンビがとてつもなくラブラブだったり、紅さんが礼さんを後ろからハグしたり、こんなふうにみんなが真ん中で歌うトップスターをみつめたりじゃれあったりするの、星組だけかな。楽しい時間でした。
まだ語るかもしれませんがこのへんでやめておきます。
舞台写真はツイッターから拾いました。
「霧深きエルベのほとり(鴎の歌)
作詞/菊田一夫 作曲/入江薫
鴎よ 翼にのせてゆけ
我が心の吐息を
遠きふるさとの エルベの流れ
霧は深く ため息のごと
岸辺によせる さざ波は
別れし人の睫毛にも似て
いつも ふるえる
鴎よ つたえてよ
我が心 いまも 君を愛す
鴎よ つたえてよ
我が心 いまも 君を愛す」
オープニングとエピローグでフランクフルト号の甲板に立ってカールが歌う「鴎の歌」。言葉が美しいですね。善悪の対立はなく、誰も死なないし、誰も悪くない、切ない心の物語。星組の担当がまわってきたとき、この作品を紅カールで上演したいと劇団にかけあった上田久美子先生の感性と作品の世界観をこわすことなくリリカルに観客に訴えかけてくる演出、すごいなあと思います。すでに書きましたがふわふわの白いドレスを着たマルギットの白い背中をカールが札束で叩く場面、マルギットの妃咲愛里さんの着こなしがとてつもなく可愛くてきれいなので残酷さがいちだんと際立ちました。マルギットの白い背中を客席にみせながら、こういう際まで迫ってくる演出、上田先生ならではと思います。
愛里さんのマルギット、お人形さんのように可愛いですがただ可愛いだけではカールとフロリアンのどちらもマルギットの幸せを願う姿を観客が納得できない、観客が違和感なく物語を受け入れられる、無知ゆえの残酷さをもつと同時に無垢で可憐なマルギット。無知と無垢のバランスが絶妙なマルギット。発声が少し気になるかなあというところはありましたが、こうしてマルギットを体現できる人も希少だろうなと思います。
音波みのりさんが演じるアンゼリカが偶然再会したかつての恋人カールを心配する姿も心に沁みました。カールとマルギットの結婚披露パーティーでは心配そうにカールばかりを見つめていました。夫に内緒でカールに会いにきたアンゼリカに、カールのもとを離れなければならなかった理由を言おうとするアンゼリカの言葉を遮り、「お前が幸せならいいんだよ」ってカールが言う場面もまた切ないものがありました。
カールとは対照的な礼真琴さん演じる知的で紳士なフロリアン。タキシードの着こなしがとてつもなく綺麗なのが彼の頭の良さをより引き立ていましたが心の中は複雑な人に見えました。マルギットが自分と結婚するのがいやだからだと知りながらマルギットを捜し、街中でみつけたマルギットがカールに惹かれている様子をみて二人のために結婚披露パーティーを開くことを提案したり、カールの心情を読み取って代弁しマルギットに兄のように諭したりする姿の本心はどこにあるのだろうと思いました。「マルギット、おきき」。とてつもなく優しい姿が少しこわいようにも感じられました。マルギットの妹シュザンヌにはマルギットへの気持ちを打ち明けますがマルギットには言わない。カールにゆだねようとする。シュザンヌはフロリアンに惹かれていてその気持ちを打ち明ける。なかなか複雑です。カールがフランクフルト号にのって再び航海へと旅立って行ったのと一足違いで港にやってきたマルギットとフロリアン、ふたりの「カール」「カール」と呼ぶ声がこだましながらセリがさがっていき、フランクフルト号のカールが甲板に姿を現すという演出でした。カールの優しい涙があとになって沁みてくる。複雑なのになぜかあったかい気持ちになれる物語。
七海ひろきさん演じる水夫仲間のトビアスが水の上に石を飛ばす場面、客席前方は笑いがおきていました。兄を心配してやってきたカールの妹ベティと結婚式をあげて船を降りることを決意し、「あばよ」と去っていく後ろ姿がかっこよすぎました。身分の同じ二人が結ばれたラストが物語にあたたかい花をそえていました。マルギットとカールをさがすカウフマン警部は天寿光希さん、似合います。ビア祭りの場面では水夫仲間たちと酒場の女たちでカップルができていたようだし、カールのようになりたいと飛び込んできた少年の姿も印象的で、どなたが演じているのだろうと気になりますがなかなか全員は認識しきれないのが残念。目が足りません。
ショー『エストレージャス』は情熱大陸の曲が使われている場面があったみたいですがタカラヅカアレンジでわかりませんでした。そのほかJPOPは聞いたことある気がするけどあまりわからずでした。トップコンビの二回目のデュエットダンスはタンゴ、衣装が舞台でみるとキラキラ、キラキラ、眩しすぎるほどでした。それから客席降りもあり全員が紅さんを見つめながら盛り上がる場面、広い大劇場の舞台も客席もあったかであつい空間になっていました。紅さんが「歌って踊って発散したほうがええでぇ」って言ってくれました。東京ではなく関西にいるのだと実感。トップコンビがとてつもなくラブラブだったり、紅さんが礼さんを後ろからハグしたり、こんなふうにみんなが真ん中で歌うトップスターをみつめたりじゃれあったりするの、星組だけかな。楽しい時間でした。
まだ語るかもしれませんがこのへんでやめておきます。
舞台写真はツイッターから拾いました。