幸せと不幸との共存、身体記憶、人は体に刻み込まれた幼い時の幸せな時間があれば、その後の人生が幸せとはいえないものになったとしても、幸せの記憶を礎として人の道に外れることなくどうにかこうにか生き延びていくことができるということをあらためて心に刻みたい。
ハンスのもとに届いた手帳をきっかけに火事の日の記憶、すなわちパンドラの箱をあけはじめた四人の子供たちがたどりついたのは博士を殺したのは自分たちだという現実でした。日本版ではぼんやりと匂わせる程度でしたが韓国版では背景にはナチスがあることをはっきりと描いているそうです。博士は養子にした子供たちをモルモットとして人体実験を行っていました。火事の日はアンナが実験台で、アンナは博士から性的虐待さえ受けていました。その場をみていた子供たちが博士を殺めると、子供たちからその忌まわしい記憶を消し去るために家政婦で博士の実験の協力者だったアンナが、子供たちに催眠術をかけて家に火をつけ、子供たちを火の中から救い出したのでした。
舞台装置はシンプル。椅子とテーブルを囲む白いカーテンとシャンデリアが展開に沿って時折大きく揺れるのが不気味で緊迫感を醸し出していました。博士が殺される場面は舞台の真ん中にあるソファに博士がいるかのように、子供たちが次々とソファに横たわる博士に手をかけていき息絶えると忌まわしいものを隠すために椅子をいくつも重ねておき、やがてメリーが家に火をつけるとソファと共に博士が赤々と燃えていくという演出でした。『エリザベート』で棺の舞台装置による世界観を創り出した二村周作さんが担当。前衛的な匂いがたまりませんでした。
休憩はなく、二時間ぶっとおしの舞台。観劇後はアガサ・クリスティーの短編小説を読んだあとのような感覚でした。子供たち四人は出ずっぱりで衣装を変えないまま声色によって現在と子供時代を行ったり来たり。大きな四人がアンナに甘える、幸せだった子供時代の場面では客席に背中をみせる形でソファにぎちぎちにすわってはしゃいだりする姿は少しユーモラス。2014年のアンナは男役だった音月桂さんの、宝塚退団後の初舞台ということでドスをきかせる場面がありました。客席は宝塚ファンが多かったので狙った演出でしたかね。2016年のアンナは中川翔子さん。ワンピースも音月桂さんの水色からピンク色に変わって少女感たっぷりでした。このあたりがいちばん雰囲気違っていたかな。アンナが傷つけられ怯える場面も・・・。男兄弟3人はアンナを守ろうと必死になります。長男のハンスは小西遼生さん。弁護士ということでスーツ姿が凛々しい立ち姿でした。長男としての責任感から兄弟たちを呼び集め忘れ去った過去をひも解こうとしたハンス。不安神経症のヨナスは良知良次さん、強く不安を感じたときの尋常ではない怯える表情と仕草、自己防衛が働く姿がインパクトありました。去年の9月『ドリアン・グレイの肖像』で拝見したとき(博物館劇場の一列目でした)、美しいお顔立ちでびっくり、サスペンダーをした少年感のある姿が印象的だったので実年齢を知ってさらにびっくりしました。ヘルマンは上山竜司さん、『るろうに剣心』でアンジョルラスの面影がどこにもない武田観柳を拝見したときは、役の振り幅がこれまた大きくてびっくり。ベストを着た姿がハンスと対照的で、感情を爆発させてハンスに反発する姿が印象的でした。
(もう少し続く)
2014年の舞台写真(宝塚ジャーナルとキューブ公式ツィッターよりお借りしています。)
ハンスのもとに届いた手帳をきっかけに火事の日の記憶、すなわちパンドラの箱をあけはじめた四人の子供たちがたどりついたのは博士を殺したのは自分たちだという現実でした。日本版ではぼんやりと匂わせる程度でしたが韓国版では背景にはナチスがあることをはっきりと描いているそうです。博士は養子にした子供たちをモルモットとして人体実験を行っていました。火事の日はアンナが実験台で、アンナは博士から性的虐待さえ受けていました。その場をみていた子供たちが博士を殺めると、子供たちからその忌まわしい記憶を消し去るために家政婦で博士の実験の協力者だったアンナが、子供たちに催眠術をかけて家に火をつけ、子供たちを火の中から救い出したのでした。
舞台装置はシンプル。椅子とテーブルを囲む白いカーテンとシャンデリアが展開に沿って時折大きく揺れるのが不気味で緊迫感を醸し出していました。博士が殺される場面は舞台の真ん中にあるソファに博士がいるかのように、子供たちが次々とソファに横たわる博士に手をかけていき息絶えると忌まわしいものを隠すために椅子をいくつも重ねておき、やがてメリーが家に火をつけるとソファと共に博士が赤々と燃えていくという演出でした。『エリザベート』で棺の舞台装置による世界観を創り出した二村周作さんが担当。前衛的な匂いがたまりませんでした。
休憩はなく、二時間ぶっとおしの舞台。観劇後はアガサ・クリスティーの短編小説を読んだあとのような感覚でした。子供たち四人は出ずっぱりで衣装を変えないまま声色によって現在と子供時代を行ったり来たり。大きな四人がアンナに甘える、幸せだった子供時代の場面では客席に背中をみせる形でソファにぎちぎちにすわってはしゃいだりする姿は少しユーモラス。2014年のアンナは男役だった音月桂さんの、宝塚退団後の初舞台ということでドスをきかせる場面がありました。客席は宝塚ファンが多かったので狙った演出でしたかね。2016年のアンナは中川翔子さん。ワンピースも音月桂さんの水色からピンク色に変わって少女感たっぷりでした。このあたりがいちばん雰囲気違っていたかな。アンナが傷つけられ怯える場面も・・・。男兄弟3人はアンナを守ろうと必死になります。長男のハンスは小西遼生さん。弁護士ということでスーツ姿が凛々しい立ち姿でした。長男としての責任感から兄弟たちを呼び集め忘れ去った過去をひも解こうとしたハンス。不安神経症のヨナスは良知良次さん、強く不安を感じたときの尋常ではない怯える表情と仕草、自己防衛が働く姿がインパクトありました。去年の9月『ドリアン・グレイの肖像』で拝見したとき(博物館劇場の一列目でした)、美しいお顔立ちでびっくり、サスペンダーをした少年感のある姿が印象的だったので実年齢を知ってさらにびっくりしました。ヘルマンは上山竜司さん、『るろうに剣心』でアンジョルラスの面影がどこにもない武田観柳を拝見したときは、役の振り幅がこれまた大きくてびっくり。ベストを着た姿がハンスと対照的で、感情を爆発させてハンスに反発する姿が印象的でした。
(もう少し続く)
2014年の舞台写真(宝塚ジャーナルとキューブ公式ツィッターよりお借りしています。)