日曜日の午後。
オレがリビングでゴスペルと遊んでいると不意に玄関の方が騒がしくなったが、どうせ爺さんの客だろうと思って放っておいたら勝手に若い男が四人ほど上がり込んできた。
「おお、お前がオヤジの孫か」
「目付きがそっくりだな」
「意外に可愛いじゃねえか」
「生意気そうな面してやがる」
好き勝手なことをぬかしながら無遠慮に近付いてくる体格の良い男達にゴスペルが威嚇のうなり声を上げるが、男達は全く怯まずに素早く三人がかりでゴスペルを押さえてしまう。何するんだと叫んで連中に飛びかかりかけたオレも最後の一人に抱え込まれてしまった。
「ご主人様を守ろうとするとは良い犬だ」
「良い犬だが、年を取りすぎたな」
「安心しろ、お前も坊ちゃんも取って食いやしねえよ」
「そうそう、何しろ坊ちゃんはオヤジの大事な……」
男達の言葉はそこで途切れる。直後に四人は床に転がされ、オレとゴスペルは呆然とそれを眺めるだけだった。
「何をしておるんだ、お前等」
外見からは想像出来ぬ俊敏さで瞬く間に四人を制圧した爺さんが明らかに激怒寸前の口調で訊ねると、男達は床から跳ね起きるなり嬉しそうに答えた。
「オヤジ、お久しぶりです!」
「とうとうお孫さんと暮らせるようになったと伺ってご挨拶に参りました!」
「と言うか、どうしてすぐに知らせてくれなかったんですか!」
「お祝いしましょうよお祝い!」
無遠慮に響き渡る男達の蛮声に対して「やかましいわ!」と更に巨大な声で一喝してから、爺さんは渋い顔になる。
「……まあ、お前等にすぐ知らせなかったのは悪かった。色々あったから事態が落ち着いてからと思ってな」
話を聞くと、何でも四人はオレの母さんが家を離れてから爺さんが面倒を見た施設育ちの里子だという。爺さんは自分の奥さんに死なれてからずっと男やもめで暮らしてきたが、里親としての条件は満たしていたらしい。現在は四人とも社会人として独立して個別に生活しているのだが、『オヤジ』である爺さんを心配してしょっちゅう訪ねてくるのだそうだ。
「まあそんなわけで、宜しくな坊ちゃん」