カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

「雷」「息」「危険な魔法」ジャンル「ミステリー」より・お伽話のように

2015-02-15 14:42:25 | 三題噺
 恋というものが危険な魔法である事など、この年になるまで知らなかった。
 あの子を一目見た瞬間に雷に打たれたような衝撃が走って息が止まり、再び呼吸が出来る頃には既に心を奪われていた自分に気付く。だが、二人の間には年齢や環境など様々な障害が立ちはだかっていて、仕方なく僕は彼女を攫った。お姫様のように大事にすると誓った僕を、しかし彼女は拒んで『おうちに帰して』泣きわめいた。僕は慌てて彼女を静かにさせようとしたが、そこで酷い失敗を犯してしまって、その結果、永遠に彼女を失った。

 みんな恋のせいだ。
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「鈍器で後頭部を一撃」より・砕け散る

2015-02-15 00:01:01 | だからオレは途方に暮れる
爺さんが留守なのか灯りの消えたリビングに、オレはゴスペルの名前を呼びながら駆け込む。が、リビングにゴスペルの姿はなかった。
「……ゴスペル?」
 次の瞬間、オレは狂ったようにゴスペルの名を呼びながら家中を駆け回る。それでもゴスペルを見つけられなかったオレは玄関で靴を履き直して外に飛び出そうとした、その時。
「何じゃ、もうパーティーは終わったのか?」
 リードで繋いだゴスペルを連れた姿で爺さんが庭に立っていた。そのままゴスペルからリードを外している最中にオレの様子に気付いたらしく、眉根を寄せて問いかけてくる。
「まさかとは思うが、喧嘩でもしたのか?」
 直後、オレの中で何かの箍が完全に外れてしまった。そして次の瞬間には心配そうに鼻面を押し付けてくるゴスペルにも構わず、ただ感情のままに叫ぶ。
「オレのゴスペルに触るなよ!父さんや母さんだけじゃなくゴスペルまで横取りする気かよ!」
「……何の話を」
 訳が分からぬといった表情の爺さんに、オレは絶対に言ってはならない言葉を口走った。

「じーちゃんに会いに来ようとしなければ、父さんも母さんも死ななかったんだ!」

 直後、爺さんの表情が思い切り歪んだ。殴られる!と反射的に身を硬くして目を閉じるオレだったがいつまで経っても衝撃は訪れず、恐る恐る目を開くと普段通りの無愛想な爺さんがオレを見下ろしながら『そうか』と一言だけ呟いて一人で家に入っていった。
 どうしたら良いのか判らないまま立ち尽くしていると、ゴスペルが何かを見つけたように吼える。
「どうしたゴスペル」
 その視線を追うと、垣根の外にあいつが立っていた。今にも泣きそうな表情で見詰めてくるあいつに、オレはどうしようもなく理不尽な怒りを感じる。

 優しい爺さんや妹、それに離れていても立派な両親がいて何不自由なく幸せに暮らししているくせに、どうしてそんなに悲しそうな顔が出来るのか。

「あの、ボクも、おじいちゃんや妹も、今日両親が帰ってくるって知らなかったんだ」
 驚かせちゃって本当にごめん、そんなあいつの言葉もその時のオレには全くの言い訳にしか聞こえなかった。
「……帰れよ」
 更に何かを言いかけたあいつの言葉を遮って、オレはもう一度叫ぶ。
「帰れよ!帰れって言ってるだろ!」
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