オレの学校の連中が言う『バケモノ』は、少なくとも外見は普通の小学生だった。特に際だった筋肉質でも長身でもないし、どちらかというと顔立ちは整っている。ただ、その顔はまるで人形か何かのように明確な表情というものがなかった。
確かに不気味なヤツだと思いながらも、試合開始の合図と殆ど同時に駆け出したオレはあっさり向こうの学校の選手からボールを奪った。が、独走態勢に入る前に軽くボールを奪われ、そのまま別の選手にパスされてしまう。
「!」
いつの間にかヤツにオレの斜め後ろに貼り付かれ、更に一瞬の隙を突かれたのだと気付いたオレは、とにかくヤツのマークを振り払おうと足掻くが、ヤツはまるで影法師のようにオレの動きをそっくり真似ながら、時折オレという本体に取って代わろうといているかのように動きを封じてくる。
駄目だ、振り払えねえ!
何度かボールを奪われ、悔しいがそう認めざるを得なかったオレの耳が聞き慣れた声を捉える。あいつだと気付いた直後にオレは全力で駆け出し、向こうの選手からボールを奪った直後に、ゴールを目指す振りをしながらあいつに向かってパスを入れていた。
徹底的に独走を繰り返していたオレが他の相手にパスを回したのが予想外だったのか、流石にヤツも咄嗟に反応出来ないでいる中、あいつは針穴に糸を通すような際どい軌跡を辿って足下に転がってきたボールを巧みに操りながらゴールを目指し、見事にシュートを決める。
それからの試合はオレ達のペースで進み、結局勝ったのもオレ達のチームだった。
「やったね!ナイスアシストだったよ!」
嬉しそうにハイタッチを求めてきたあいつに対して、オレは半分呆けながらそれに応じる。ヤツに散々に翻弄されたせいでプライドはかなり傷付いたが、あいつがシュートを決められたのはオレのパスが的確だったからだし、結果的に試合にも勝った。
と言うわけでまあ、痛み分けだなと勝手に決めて何とか平常心を取り戻したオレは、ヤツがオレとあいつに向かって形容しがたい視線を向けていた理由について随分後になるまで考えることもなかった。
確かに不気味なヤツだと思いながらも、試合開始の合図と殆ど同時に駆け出したオレはあっさり向こうの学校の選手からボールを奪った。が、独走態勢に入る前に軽くボールを奪われ、そのまま別の選手にパスされてしまう。
「!」
いつの間にかヤツにオレの斜め後ろに貼り付かれ、更に一瞬の隙を突かれたのだと気付いたオレは、とにかくヤツのマークを振り払おうと足掻くが、ヤツはまるで影法師のようにオレの動きをそっくり真似ながら、時折オレという本体に取って代わろうといているかのように動きを封じてくる。
駄目だ、振り払えねえ!
何度かボールを奪われ、悔しいがそう認めざるを得なかったオレの耳が聞き慣れた声を捉える。あいつだと気付いた直後にオレは全力で駆け出し、向こうの選手からボールを奪った直後に、ゴールを目指す振りをしながらあいつに向かってパスを入れていた。
徹底的に独走を繰り返していたオレが他の相手にパスを回したのが予想外だったのか、流石にヤツも咄嗟に反応出来ないでいる中、あいつは針穴に糸を通すような際どい軌跡を辿って足下に転がってきたボールを巧みに操りながらゴールを目指し、見事にシュートを決める。
それからの試合はオレ達のペースで進み、結局勝ったのもオレ達のチームだった。
「やったね!ナイスアシストだったよ!」
嬉しそうにハイタッチを求めてきたあいつに対して、オレは半分呆けながらそれに応じる。ヤツに散々に翻弄されたせいでプライドはかなり傷付いたが、あいつがシュートを決められたのはオレのパスが的確だったからだし、結果的に試合にも勝った。
と言うわけでまあ、痛み分けだなと勝手に決めて何とか平常心を取り戻したオレは、ヤツがオレとあいつに向かって形容しがたい視線を向けていた理由について随分後になるまで考えることもなかった。