あいつは殆ど焦点を失った瞳のまま延々と「ボクのせいだ」と繰り返すばかりだった。すぐ側にいるはずのあいつの爺さんや、きっと激務の合間を縫うように会いに来たのであろう両親の言葉も、そもそも姿すら認識出来ているのかも怪しい状態だ。
「おい何やってるんだよ、お前は無事に助かって親だって会いに来てくれたじゃないか?きっともうあの蛇女に狙われることもないんだろ?なあ!」
オレがそんな風に叫ぶのも、あいつには聞こえていないようだった。ただ自分のせいでオレが撃たれたなどと、オレにとっては理不尽極まりない事を呟き続ける。あいつの母さんが耐えかねたように取りすがって泣いてもそれは変わらなかった。
冗談じゃない、あいつの指示を待たずに勝手に行動を起こしたのはオレだ。だから撃たれたのはオレが下手を打った結果というだけで、あいつは全く悪くない。
「なあ、やめろよ!」
そう叫んだ直後にいきなり視界が切り替わり、今度は爺さん達がオレの前に現れる。
爺さんはいつもの無愛想な爺さんとは思えないほど感情を露わにしながら泣いていて、兄ちゃん達はそれを哀しそうに見詰めるだけだった。
「どうして皆、ワシを置いていくんじゃ。十年我慢して、ようやく一緒に暮らせるようになったのに、どうして一人残った孫まで奪われなきゃならんのじゃ」
オヤジ、あのさ……と兄ちゃん達の一人が思い切って声を掛けようとするのを大兄ちゃんが止める。
「俺たちには、無理だ」
そう呟いた大兄ちゃんの表情が突き刺さるほどに痛くて、哀しくて、思わずオレは叫んでいた。
「何で大兄ちゃんたちじゃ無理なんだよ!みんなじーちゃんのことを『オヤジ』って呼んで大好きじゃないか!それなのに何でダメなんだよ!」
オレはもうゴスペルと一緒に、とーさんやかーさんのところに行くんだから!と叫んで父さん達の方に振り向こうとするが、父さんはオレの肩を離さなかった。
『泣かせたままに、しておくの?』
ああコレはかーさんの声だと思いながら、オレは叫んでいた。
「別にオレがいなくたって……って言うか、オレなんかいない方がいいだろ!あいつら皆でそう言ってやがったし!」