オレの気紛れというかムラ気が酷い事は昔から父さんや母さんに何度も言われてきたし、悔しいが自覚もある。だから、今回のテストの点数が悲惨な結果になったのは最近色々あった末の不可抗力で決して俺自身の実力ではない、断じて違う。
などと言い訳しながら持ち帰ったテスト用紙を丸めてゴミ箱に捨てておいたら、何故かそれを爺さんに見つけられた。
「成る程、勉強は苦手なほうか」
それだけ言ってオレにテスト用紙を返してきた爺さんを見返すべく昼休み時間に教科書を引っ張り出していると、教室を出ようとしていたあいつが声をかけてくる。
「どうしたの?サッカーやろうよ」
「うるせえな!いま忙しいんだよ!」
「えー、だって今朝も『今日こそ負けない!』とかボクに言ってなかった?」
手にした鉛筆をぶち折りかけながらも、オレは奇跡的に発揮出来た忍耐力を駆使して歯ぎしりしながら答えた。
「勝負は預けておいてやる……」
「だめだめ、勉強なんてダラダラやっても身につかないよ。遊ぶときには遊ばないと」
そのままオレの手首を掴んだあいつは問答無用でグラウンドに向かって歩き始める。そして道中いかにも良いことを思いついたとばかりに提案してきた。
「そうだ、勉強ならボクが見てあげるから学校が終わったらうちにおいでよ」
おじいちゃんもボクに友達が出来たって教えたら喜んでくれていたからきっと歓迎してくれるよ、などと笑顔でまくし立ててくるあいつの手を力ではどうしてもふり解けないまま、オレは力一杯叫んだ。
「すこしは人の話を聞けーっ!」
「え、なに、どうしたの?ところで甘いものは好き?たしかケーキが残ってるからね、美味しいんだよ」
その日のサッカーの結果については言わずもがなだろう。
そして放課後、ホームルーム終了直後の初速ダッシュ失敗が響いて逃げ切れなかったオレは、宣言通りあいつの家まで文字通り引きずって連れて行かれることになった。