何でココにいるんだと言うのが、ヤツと再会したときの正直な感想だった。
そりゃそうだろう、ヤツは隣の学校の生徒だし、オレはあいつと一緒にうちに帰る途中だったのだ。待ち伏せでもしない限り行き会う可能性は限りなく低い。
「やあ、久しぶりだね。近くに用事でもあるの?」
大概の事態には笑顔で対応するあいつが普段通りにニコニコしながら訊ねると、ヤツは相変わらずの無表情で答えた。
「お前達を見に来た」
「ボクたちを?」
訳が分からず戸惑うオレとあいつに、ヤツは僅かに眉間に皺を寄せながら話し始める。
物心ついたときから己が周囲の人間とはどこか違うこと、そもそも情緒的に何かが欠けていることにヤツは気付いていたという。だが、ヤツの両親はヤツに『優秀な息子』であることしか望まず、結果的にヤツは両親をある意味で見限ることになった。
「それでも支えになってくれる幼馴染みがいたから今まで何とかやって来られたし、これからもそうする積もりだ……だが」
まさか『仲間』がいるとは思わなかったと、ヤツの言葉はそう続いた。
「ああ?誰が誰の仲間だって?」
「だから、お前達だ。散々考えたが、それしか答えが出ない」
「一体ドコをどうやったらそんな答えが出るんだ」
「自分が周囲の連中とは異質な存在であることは、お前にだって判っているだろう」
いきなり直球で痛いところを突かれたオレはつい反射的にヤツに殴りかかるが、『ダメだよ!』と叫んだあいつに止められた。
「……たしかに、ボクたちは他の子たちとは少し違うかもしれないけど、だからといってキミの仲間とは限らないよ」
そんなあいつの口調には、珍しく隠しようのない怒りが含まれていた。
「そうだな、ひょっとしたら『敵』かもしれない」
だが、それはこれから決めることにしようと言うなり背を向けてきたヤツに、オレは悔し紛れに叫ぶ。
「もう一度勝負しやがれ!今度は絶対に振り切ってやる!」
「サッカーでか?どうしてもと言うならまあ、忙しい身体だが相手をしてやってもいい」
「忙しいってなんだよ、習いごとにでも行ってるのか?」
「デートだ」
そのまま悠々と歩み去って行くヤツをぶん殴ってやろうと駆け出しかけたオレは、再びあいつに押さえつけられた。
「一発だけでもいいから殴らせろーっ!」
「だからダメだってば!」