この作者の前作の「オーディポンの祈り」が不思議に面白かったので読んで見た。これも物語は起伏を持ちながらも静かに進んで行く。町中のグラフィティアートの落書きと連続放火。誰もが“はっ!”として動きを止めてしまう程の美貌の持ち主の「私」の弟の春。今だかってそんな男性にお目にかかった事がない。死ぬまでに一度でいいから見たい。心ときめくかしら。
その春は特異な出時を持つ。母が連続強姦魔に襲われ生まれた子である。
物語は淡々と進む。末期癌で入院している父親と私は落書きと連続放火事件の犯人を推理して行く。いつからか、二人は犯人は春ではないかと思い始める。そして、その場所は、昔、発生した連続強姦事件のあった所と一致する。
“私”はある男を事故に見せかけて殺そうと、夜その現場予定地を見に行った所で、不思議な島に行って来た男に会う。「オーディポンの祈り」の主人公である。「その島で教えてもらったんですよ。未来は神様の匙加減で決まるものなんだと。もう決まっているので、僕達がでたばたしたところで変わらない」と言う。
末期癌の父が手術の前に春に言う「お前は、俺に隠れて大事な事をやった、そうだろう」と。春は「何もないよ」と自然に笑った。「おまえは嘘をつく時、目をパチパチする。子供の時からそうだ。和泉もそうだ」
そして、兄弟を救済するための台詞を言う。「おまえは、俺に似て、嘘が下手だ」と。
“春が2階から落ちてきた。”この言葉で始まり、この言葉で終わる。結局、重力から逃れられないけど、ふっと、人生の重圧から自由になれる瞬間や言葉や心のふれ合いがある。
そうなのだ。人は決して一人ではない。一人では生きていけない。どんなに辛くても、苦しくても家族がいて、友人がいて、仲間がいる。自分だけで、抱えないでそういう人達を信頼しなくては。
現実世界には嫌な事、残酷なこと、虚しい事が一杯ある。でも、一番大切な事はお互いに無条件で信頼する事なのだと思う。やさしく、相手の心を包みこむ事なんだと思った。
その春は特異な出時を持つ。母が連続強姦魔に襲われ生まれた子である。
物語は淡々と進む。末期癌で入院している父親と私は落書きと連続放火事件の犯人を推理して行く。いつからか、二人は犯人は春ではないかと思い始める。そして、その場所は、昔、発生した連続強姦事件のあった所と一致する。
“私”はある男を事故に見せかけて殺そうと、夜その現場予定地を見に行った所で、不思議な島に行って来た男に会う。「オーディポンの祈り」の主人公である。「その島で教えてもらったんですよ。未来は神様の匙加減で決まるものなんだと。もう決まっているので、僕達がでたばたしたところで変わらない」と言う。
末期癌の父が手術の前に春に言う「お前は、俺に隠れて大事な事をやった、そうだろう」と。春は「何もないよ」と自然に笑った。「おまえは嘘をつく時、目をパチパチする。子供の時からそうだ。和泉もそうだ」
そして、兄弟を救済するための台詞を言う。「おまえは、俺に似て、嘘が下手だ」と。
“春が2階から落ちてきた。”この言葉で始まり、この言葉で終わる。結局、重力から逃れられないけど、ふっと、人生の重圧から自由になれる瞬間や言葉や心のふれ合いがある。
そうなのだ。人は決して一人ではない。一人では生きていけない。どんなに辛くても、苦しくても家族がいて、友人がいて、仲間がいる。自分だけで、抱えないでそういう人達を信頼しなくては。
現実世界には嫌な事、残酷なこと、虚しい事が一杯ある。でも、一番大切な事はお互いに無条件で信頼する事なのだと思う。やさしく、相手の心を包みこむ事なんだと思った。