ふみさんの日々雑感

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文庫「コンタクト・ゾーン」篠田節子著

2007-01-04 22:00:32 | 映画・ドラマ・小説・マンガ
最高に面白かった。この作家は好きで良く読む。始めて読んだのが、“弥勒”だった。面白くて寝るのを忘れた。この“コンタクト・ゾーン”も文庫になるのを待っていた。期待通りだった。

典型的な若くも無く年でも無く、仕事にも人生にも生き詰まっている三人の女性。アジアンリゾートにモロモロのストレス解消に行く。そして日本難民のような若い男性添乗員。中途半端な愛国心と正義感。自由奔放な彼女達を嫌悪し心で毒付く。でも外面とは裏腹に日本で不条理な男社会で生きてきた彼女達はしたたかである。彼女達は思う。海、太陽、しかし、それにセックスと続けるのは、いかにもいやらしい日本の男達の発想だ。自分と、おそらく多くの日本の女が求めているのは、ロマンスであったセックスではない。セックスはただの日常だが、ロマンスは日本では得られない非日常的体験だからだ。現地の男と親しくすると、すぐ日本の男はセックスと結びつける。でも、三人とも他人の目は気にしない。金と休暇をやっとためて来た高級リゾート地だ。

クーデターが勃発した時、彼らの考え方が生死を分けた。ちょっとした考え方の違いで添乗員は(多分男だから)巻き込まれ爆死。彼女達は観光リゾート地での大虐殺を逃れる。いみじくも添乗員が名付けバカにした“お局、白豚、ワンレン女”である事が放り込まれた民族紛争の中で身を助けるのである。

闇に紛れて逃げて流れ着いた島は虐殺が行われている都会と反対側の、まだ争いが届かない、土着の掟や風習の残る棚田の村だった。八百の精霊を敬い恐れる昔の日本の田舎に通ずるような、長老が支配する村。生き延びる為に村の女と生活と仕事を共にする。日本の昔の農村がそうでなったように過酷な労働の中に身を置く。

そして、戦争?民族紛争?政府軍?開放戦線?ゲリラ?何が是で非なのか?犠牲者を出しながらも、どっちに見方するわけでもなく、でも、その時点で自分達が生き延べる方法を考えて、したたかに協力し、あるいは知らない振りをして、嵐が過ぎるのを待つ村人達。

三人の、性格の全然違う日本女性の適応の仕方、困難に立ち向かう考え方の違い。違うからこそ、三人で補い合いながら、あまりにも想像を絶っする非日常に立ち向かって行けるのだろう。そして経験と知恵と助け合いでいつかは日本に帰れる事を夢見て村に溶け込み生き延びて行く。

物語はドキュメンタリのように圧倒的なリアリティの中、クライマックスに向かって行く。そして、感動的な最終章へ。

私も遊びに行った、バリやカンボジアなどの風景や人達を想像しながら読んだ。本当に面白かった。友達にも進めたい。
コメント
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