「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

         戦争殉難者とある上人の死

2010-07-21 05:30:47 | Weblog
チャンギーといえば今は東南アジア有数のハブ空港で、シンガポール観光の玄関口
として知られているが、かって英国植民地時代ここには監獄があった。敗戦直後、連
合国軍(英国軍)は日本のBC級戦犯千人近くをここに収監、うち129人が裁判で死刑
を宣告されて尊い命を落としている。

昨日新聞で日蓮宗第48代管長・池上本門寺貫主、田中日淳上人が96歳の天寿を全う
されて、お亡くなりになったのを知った。日淳上人は戦争中シンガポールに陸軍航空第
三司令部の中尉として駐屯していたが、僧籍にあるため、戦後南方軍司令部は田中中
尉をチャンギー刑務所の教誨師に任命した。教誨師とは収監者の精神的な悩みごとの
相談に乗り世話をする役である。

チャンギー刑務所は英国軍の厳しい監視下に置かれ、刑死した方の遺書すらすら所外
へ持ち出せなせない状況にあった。しかし、田中教誨師は、規則違反とは知りながら、
あえてこれを破り、秘密裏に日本の遺族の元に届けた。遺書の中には本のはしきれや、
トイレットペーパーに書かれたものもあった。

池上本門寺境内の能見堂わきには日淳上人の呼びかけでチャンギー遺族関係者が建
立した「殉難者慰霊碑」があり、殉難者全員の名前が刻まれている。毎年4月の第2日
曜日には関係者が集まって供養が催される。高野山奥の院にも「昭和受難者法務死慰
霊碑」があり、戦後「戦犯」という名のもとに殉難された1088人の霊が祀られており、ここ
でも年に1回法要が営まられれている。