「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          ”よいとまけ”からの警告のメッセージ

2013-01-02 08:01:21 | Weblog
NHKの紅白歌合戦などここ10年近く見たことがなかったが、新聞予告を見て「よいとまけの歌」(美輪明宏作詞.作曲)時だけチャンネルを回した。”父ちゃんのためならエンヤコラ、かあちゃんのためならエンヤコラ、もうひとつにおまけエンヤコラ”ー。この歌は戦前昭和の時代を知っている僕らの世代にとっては懐かしく考えさせれるものが多い。

美輪明宏の歌った「よいとまけの歌」は、昔、僕らガキ共が歌った節回しとは違うが、まさに僕らが見た女土方(当時そう呼ばれていた)が道普請で歌っていたものだ。姉さんかぶりに、かすりのモンペ―をはいたおばさんたちが十数人輪になって滑車で大きな槌を地面に落としながら、これを歌っていた。東京の区部でもまだこういった風景がみられたのだ。

美輪明宏は昭和10年長崎生まれ、子供だった頃近所の石炭坑山で女性坑夫がこの歌を歌っているいるのを聞いたという。昔、僕は直方の石炭記念館を訪れたことがあるが、展示物の中に女性たちが坑内で男たちにまじって働いているのを見たことがある。戦前、日本の女性は今の人たちが想像する以上にたくましかった。たくましいという以上に、女性も働かなければならないほど貧しかったのだ。

黒の衣装に黒髪のカツラを被った美輪の6分間はまさに絶唱であった。僕はこの絶唱を聞いて美輪の歌の中に現代の日本人に対する警告が秘められているようにも受け取れた。今、日本には200万人もの生活保護受給者がいるそうだが、その中には若者が”なまほ”と呼んでいる働けるのに働かず保護費で生活している者もいるという。戦前の日本は貧しく、社会保障も十分ではなかった。美輪の絶唱はたるんだ現在の日本に対する警告のメッセージなのかもしれない。