●首相指示と政党政治
台湾の馬英九総統は、議会や「内閣」にすら図らず、一部の官僚(行政官)と共に中国とのサービス貿易協定を推進し、署名してしまいました。TPPでいえば、「交渉妥結」になります。
恐ろしいことに、サービス貿易協定の「内容」について、台湾国民はもちろんのこと、閣僚のトップである首相すら知らされていませんでした。交渉妥結後に、はじめて中身を知らされ、政治家や台湾国民は愕然としたわけです。
何しろ、明らかな不平等条約であり、通信など台湾の安全保障に直接的にかかわる分野まで「自由化(中国資本が自由に投資できる)」されることになっており、さらに中国人労働者や投資家がこれまで以上に台湾に渡り、住み着くことが容易になる条文になっていたのです。
中国共産党というか、中国には「洗国(せんこく)」という言葉があります。(参考図書 西尾幹二:著「中国人に対する「労働鎖国」のすすめ」飛鳥新社)
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洗国とは、支那大陸において「他国」を乗っ取る際の手法のことで、まずは国内の流民を数十万人規模で「対象国」に移住させます。
当初は「外国人労働者」として、いずれは「外国移民」として、膨大な支那人を送り込み、現地に同化させていきます。やがて、支那から官僚が送り込まれ、その国・地域を「中国(国名は色々ありますが)」支配下に置くわけです。現在、チベットやウイグル(東トルキスタン)で行われているのが、まさにこれで、チベット人男性やウイグル人男性を中国国内に散らばらせ、現地に同化させる。
さらに漢人をチベットやウイグルに送り込み、現地の女性と結婚させ、これまた同化させる。やがては、現在の満州(旧:女真族の国)同様に、国境線を実質的に消滅させ、支那の一部として支配を始める。
これが洗国です。
今風に言えば、民族浄化(エスニック・クレンジング)でございまして、明らかに国際犯罪です。とはいえ、現実に中国共産党はチベット人やウイグル人に対する洗国をほぼ完成させ、台湾にもじわじわと浸透していっています。
恐ろしいことに、チベットやウイグルではすでに漢人の数が過半数を超えてしまっており、先日のクリミアのように「民主主義」に訴えたとしても、中華人民共和国への帰属が選択されてしまいます。
台中サービス貿易協定は、明らかに中国共産党が仕掛けた洗国の一手なのですが、そんなものを総統が「勝手に」進めていたわけですから、台湾国民が激怒して当然です。台湾に対する洗国を、グローバリズムあるいは自由貿易交渉という建前で、国家のリーダーが秘密裏に進めていたわけでございます。
さて、安倍総理は外国移民問題について、
「外国から移民を受け入れるのではなく、高度な能力や資質を有する外国人に日本で働いてもらうだけ」
と、言い訳をするでしょう(もう、しているかな)。とはいえ、日本の「高度な能力や資質を有する外国人を受け入れる制度」すなわち、「高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度」が、「どこの国の人材」に対して最も多く適用されているかを知って欲しいのです。もちろん、アメリカ人でも、イギリス人でも、フランス人でも、ドイツ人でも、韓国人ですらなく、「中国人」です。
安倍総理が外国人労働者や移民問題について「高度な能力や資質を有する外国人を受け入れるだけ」と説明し、国民が安心をしたとしても、やってくる「高度人材」は中国人です。そういう制度になっている以上、仕方がありません。
中国側が我が国の「高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度」利用し、洗国を仕掛けている可能性が「ゼロではない」以上、三橋は安倍政権の外国人労働者受け入れ策「全て」に反対せざるを得ないのです。
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三橋氏のブログより・・・元のメルマガにリンクが貼ってあったのでクリックしました。
さて、最近の安倍政権で気になるのが(特に気になる、という意味)、「首相指示」の乱発です。
『3月19日 安倍首相:配偶者控除の縮小検討指示 女性の就労促進狙い
http://mainichi.jp/select/news/20140320k0000m020107000c.html 』
『3月27日 安倍首相、TPP日米協議加速を指示
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201403/2014032700980 』
『4月4日 外国人労働者拡大へ 首相、家事支援など活用指示 「女性の活躍推進の観点から」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140404/plc14040423520026-n1.htm 』
『4月16日 安倍首相、法人税率引き下げ指示 自民党税調会長に
http://www.asahi.com/articles/ASG4J6FYFG4JUTFK017.html 』
『4月17日 首相、混合診療拡充を指示 成長戦略の柱に
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS16036_W4A410C1MM8000/ 』
たとえば、東北復興を早期に成し遂げるために、土木・建設産業における供給能力強化のための予算獲得を「指示」であったり、国土強靭化基本計画に「数値目標」を含めるよう「指示」したり、(景気対策のために)消費税を臨時に軽減する法案の検討を「指示」するというならば、個人的にはまだ理解できます。
ところが、最近の安倍総理の「指示」は、ことごとく新古典派経済学的な「小さな政府」「自由貿易」「労働規制の緩和」路線なのでございます。
無論、総理の指示の「向う側」には、産業競争力会議や経済財政諮問会議などの「民間議員」と自称する経営者たちがいて、「自社の利益のための政治」を実現するべく、安倍総理に「政治力を発揮」しているのでしょう。結果、日本の民主主義は力を失いつつあります。
特に、自民党の政党政治が無視されているように「見受けられる」ことが非常に気になります。
自民党は古い政党だけあって、党内の意思決定プロセスがきちんと整備されています。
すなわち、党内議論という民主的なプロセスを経て、政治を動かそうとするわけです。当たり前ですが、自民党の国会議員は、全員が「選挙」で当選した「国民の代表」なので、議員による議論は正しい民主的プロセスになります。
それに対し、産業競争力会議や経済財政諮問会議の「民間議員」たちは、選挙というプロセスを経ていません。
議員でもない一般人が「首相指示」で政治を動かすのでは、完全に「日本国の私物化」です。
さらに気になるのが、TPP交渉参加以降の安倍総理が具体論で説明せず、抽象論で逃げを打つケースが増えてきていることです。
「(日米)がTPPを作るのは歴史の必然です」「TPPこそ瑞穂の国の資本主義!」「女性が輝く日本へ」などですね。
『安倍総理と石破幹事長の間に“温度差” TPP対応で
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000025281.html
TPP=環太平洋経済連携協定の協議を巡り、安倍総理大臣と石破幹事長に微妙な温度差です。
安倍総理大臣:「(関税の)数字にこだわることも重要だが、それを超えたもっと大きな、このTPPには意味があるという高い観点から妥結を目指していきたい」
安倍総理はこのように述べて、妥結に強い意欲を示しました。
一方、自民党の石破幹事長は、BS朝日の番組収録で、「国益を損ねて、重要産業を壊滅させてまでまとめる必要性はない」と述べて、安易な妥協はすべきでないという考えを示しました。』
石破幹事長の、
「国益を損ねて、重要産業を壊滅させてまでまとめる必要性はない」
は、恐らく閣僚を含む多くの自民党議員が共有している気持ではないかと推察します。と言いますか、そうでなければ怖いです。
★ これから下は先日UPした「討論」動画のことです。
明日の討論でも話題になっていますが(何しろテーマが「言論」だったので)、論理的な、あるいは事実・数値ベースの説明ができない人ほど、
「関税の数字にこだわることも重要だが、それを超えたもっと大きな、このTPPには意味があるという高い観点から妥結を目指していきたい」
といった抽象論に走ります。TPP関連でいえば、前々首相の「平成の開国」んもそうですね。
要するに、まともに議論すると勝てないからこそ、抽象的言い回しに逃げざるを得ないわけです。
何なのでしょうか「高い観点」とは? 日本国民が知りたいのは、いかなるメリット、デメリットがあるのかに関する具体論でしょう。
結局、現在の日本では総理に政治力を発揮し、「首相指示」で民主主義をすっ飛ばして、ことを進めようとする一部の構造改革主義者、グローバリストたち(しかも、ほとんどが民間人)が、権力を現実に持ってしまっているわけです。
これに政党政治という「民主主義」が反発しようとすると、「抵抗勢力だ!」
とやってくる。具体論を国民が知りたがっているにも関わらず、総理自ら抽象論で逃げ、議論を放棄する。
まんま、小泉政権期と同じパターンになりつつあります。
先日の寺ちゃんでも話しましたが、
「グローバルをメインの市場に据え、外国企業の力を借りて成長しましょう」
という経済的自虐主義と、
「日本国内をメインの市場に据え、日本国民と日本企業の力で自ら成長しましょう」
という国民経済主義とでは、大本の思想が完全に異なります。
思想が異なる以上、登場する政策も真逆の方向を向くことになるわけです。
全部が全部とは言いませんが、総理の「指示」の多くは経済的自虐主義に基づく政策になります(要するに「グローバリズム」ですが)。
首相「指示」による政治の暴走を止めるには、政党政治を動かすしかありません(選挙がないので)。そのためには、国民が「言論」により、政治家に政治力を発揮するしかないのです。
というわけで、明日のチャンネル桜「日本よ、今...「闘論!倒論!討論!」 言志復刊記念・言論最前線の現在」は注目でございます。(何しろ、西部邁先生までご出演されました)
★ この「討論」はhttp://blog.goo.ne.jp/bellavoce3594/e/c6dc0d816e6600d7750e3266960edf07・・・クリック
★ 以上、三橋さんのブログエントリはハッキリ書いています。これは「討論」番組の前に書かれたことですね。
ところで、西部先生も健康が心配ですが、西部先生の奥様がガンの終末期ということです。
西部先生が雑誌「表現者」にお書きになっていました。
介護もなさっているそうです。そんな中で「討論」に出て来られた、はじめて知りました・・・。
「討論」で気になったのは安倍さんのプロパガンダ化している小川栄太郎氏、この人は2月初旬の「さくらじ」でひどいことを言っていました。また書いてみます。