その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロンドンマラソン完走記 (その2) 【スタート~ハーフ地点(13.1マイル/21.098キロ)】

2012-04-25 23:53:14 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 スタートラインに引きつめられた、タイム記録用の茶色のマットを強く踏みしめ、自分のストップウォッチのボタンを押して、いよいよスタート。(うまくいけば)4時間前後の個人ドラマが始まった。

(スタート地点へ向かうランナー達)


 この1週間は見たことのないような青空の下で、朝のみずみずしい空気を切って走り始める。最高のコンディションだ。こんな天候で走れる幸運に、とにかく感謝しなくては。住宅街の沿道では、連なった観衆が声援とともにランナーを送り出す。でも、よくあることだが、スタート直後は混雑でコースが渋滞し、思うように走れない。最初の1マイルを経過したところで時計を見たら、9分で走るはずのところが、なんと10分もかかっている。いきなり1分以上のロスか・・・。

(奥に見えるのが1マイルの標識)


 2マイルを過ぎると、ようやく混雑を抜ける。丁度、ペースをつかみ始めたかなあと思ったら、今度は自分の後ろでドッタという鈍い音が聞こえた。ふと振り向くと女性ランナーが、何かにつまずいたのか、前のめりで倒れている。2年前のアムステルダムマラソンでの自分の転倒悪夢を思い出した(こちら→)。「あの形で転ぶと結構傷ついているだろうな。大丈夫かな?上手く立ち直ってくれればいいなあ」と思いつつ、自分のことで精一杯なので、とにかく走り続ける。ちらほらと仮装ランナーも見える。折角だから、仮装ランナーはカメラに収めておこうと思い、ビール瓶の着ぐるみを着たランナーが隣に居たのでシャッターを切るものの、走りながらでは、なかなか上手く捉えられない。なので、あきらめた。すると、今度はフラフープを廻しながら走っている女性を発見。今度は何とか捕まえた。「このまま完走できたら、この人、さぞかしウエストが締まるだろうな~」などとしょうもない雑念が頭をよぎる。

(いろんなランナーたち。これはカバ?)


(ホントにこの人42キロをフラループまわしながら走るのだろうか?)


(何故ヘルメットやクリケット?)
 

 6マイル(9.6キロ)地点頃からグリニッヂのダウンタウンに出てくる。ペースは落ち着いたが、仮装ランナーに気をとられていたら、6マイル(9.6キロ)でラップを刻み忘れた。気を取り直して、直後の10キロで時計を確認。55分52秒。借金こそ何とか返したものの、前半戦に作る予定だった貯金は全く貯まっていない。ペースもつかみつつあるので、「ここで少しスピード上げようかなあ?」と色気が出てくる。でも、あわてて、「今日はタイムよりレースを楽しむんだ」と言いかせ、グリニッジの船着き場近くに展示してある帆船カティーサーク号の横を走る。歩道に群がるように並んだ観衆にに目をやりながら、この最高の雰囲気を全身で受け止めながら走る。

(左前方が王室海軍学校。赤いゲートは10キロ地点)


 3年前、初めてロンドンマラソンを応援で見に行ったときに、観衆のすごい声援にたまげたのだが、走る立場になると、その凄さが実感として身にしみる。沿道の観衆が絶えることなく連なっている。2重3重の層になっていて、後方に位置した人が、一生懸命、人の隙間や背伸びしながら、知り合いや同じチャリティのメンバーを探しているが目に入ってくる。そして、私にもTシャツにプリントした私の名前を、見ず知らずの人が、何人も呼びかけてくれる。"Go! XXXX! (私の名前)"って。こんなに自分の名前を続けざまに呼ばれたことがあるだろうか?って思ったぐらいだ。呼ばれるたびに、お愛想だけはいい私は、手を振ったり、両手を挙げて"Thank you"と言っては応える。走りながらだけど、呼んだくれた人とは、不思議なぐらいしっかりと目と目が合う。この人なんで、こんなに嬉しそうに自分の名前をコールしてくれるのだろう。お愛想抜きで、こんなうれしいことはないし、自然に笑みがこぼれてしまう。また、不思議なことにコールは連続するという特徴を持っているらしい。誰かが一旦呼んでくれると、何故かそれが連鎖してしばらく続いていくのである。そして、いつの間にか収束していく。なんか面白い。

 ROTHERHITHEエリアに入ると、右に左に細かくコースが折れる。でも、大丈夫。2週間前に下見ランをしているので、コースは全て頭に入っている。10マイル地点を1時間30分54秒で通過。4時間ペースでやっと30秒の貯金。

(珍しく人が途切れたROTHERHITHEエリア、10マイル地点)


 そして、いよいよ前半のハイライト、タワーブリッジ(20キロ過ぎ地点)に差し掛かる。思えば、3年前にこの地点でこの大会を初めて応援し、「いつかは応援される側で走りたい」と思った場所を走っていく。自分でも信じられない。観衆の盛り上がりも、今まで以上に最高潮。ワーッと言う声援ともどよめきともつかないような熱気と音の塊が自分を包む。244メートルのこの橋を走って渡ってしまうのは、あまりにももったいない。「もっと楽しませてくれ~。何ならここだけ2回走っても良いし、時間が瞬間的に止まってくれればいいのに」と真剣に思った。真っ青の空に浮かぶ白い雲、青色に塗られた橋の骨格部分と灰色の石で出来た塔の部分。なんて美しい景色だろう。

(タワーブリッジが近づいて来る)


(くぐります)
 

タワーブリッジを渡ると、今度は右折して再び東方面に向かうと、いよいよ中間地点が来る。ラップは目標1時間55分に対して、1時間59分14秒。タワーブリッジをゆっくり走り過ぎたのか、このタイムだと同じペースで走り続けないと4時間切りは難しい。う~ん、ちょっとギリギリだなあ~。


(つづく)


コメント (4)
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