その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

「貴婦人と一角獣」展 @国立新美術館

2013-07-06 08:06:08 | 美術展(2012.8~)


 昨年ロンドンから帰国した際、「行きたいとこリスト」に載せていたけども実現できなかったことがいくかあったのですが、パリの中世美術館への訪問もその一つでした。パリはユーロスターでロンドンから2時間半。東京から大阪に行くような感覚ですし、仕事でもプライベートでも何度か訪れたのですが、「行こう、行こう」と思っている間に、帰国となってしまい、心残りの一つでした。ですので、今回、その中世美術館から目玉展示作品である「貴婦人と一角獣」が来ると聞いた際は、「ホント!?」という驚きと喜びで、小躍りするほどでした。

 今回の国立新美術館での展示は分かり易く、入場すると最初に「貴婦人と一角獣」の六連作が一堂に展示された大部屋に入ります。照明を落とした大部屋に、畳4畳分ぐらいは優にあると思われる大きな6枚のタペストリーが掛る様は圧巻です(中世美術館では、一枚一枚を半円形に並べて展示してあるようなのですが、今回の展示は一枚一枚に空間を空けた半円にしてある分、展示スペースを大きくとって、多数の人が鑑賞できるようになっていました)。

 えんじ色を基調にした花柄文様に、中央に貴婦人とライオン、一角獣が浮かび上がるように配置されたデザインは安定感がありますし、周辺に描かれた木々や猿、猫、兎、鳥たちの様子は、現実離れした世界を感じさせます。同時に、貴婦人や召使の表情、仕草で、一枚一枚のタペストリーから高貴で格調高い雰囲気が伝わってきます。それぞれは、人間の五感(蝕覚、視覚、味覚、聴覚、嗅覚)と第六感を表しているそうですが、そうした含意にはこだわらず、ボーっと、ぼんやりと眺めているだけですが、贅沢な時間を味わえます。近くで見ると、これが織物というのが信じられないくらい、繊細で表現力豊かなイメージです。どうやって、こんな織物を織ったのか?16世紀の職人さんの姿を想像されます。

 展示は、この6枚のタペストリー以外にも、描かれた花や動物をパネルで比較展示するコーナーや、絵にも描かれたような、装身具や宝石類の展示、また当時のステンドガラス、他のタペストリーなども展示してあります。「貴婦人と一角獣」がいろんな側面で楽しめるように工夫が凝らされていて、楽しめます。

 過去にはNYにしか引越し展示されたことがないという本作品。中世美術というのは人によって好き・嫌いが分かれるかもしれませんが、お奨めいたします。 東京では7月15日までです。

 ※展覧会のHPはこちら→
コメント (4)
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