その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

台北 國立故宮博物院

2013-08-24 11:02:22 | 日記 (2012.8~)


 夏休みは8年ぶりに台北を訪れた。8年前に訪れた際は、夏の台北の暑さにうんざりしたものだが、今年はもうすでに東京の暑さに参っていたので、東京と殆ど変らない台北の気候には何の違和感もなかった。

 台北訪問の主な目的は昔の学友たちとの再会なのだが、もう一つのメインイベントは故宮博物院訪問。前回の訪台時には、博物院は大改装中とのことで泣く泣く見学は断念したので、そのリターンマッチである。

 開館の8:30に合わせて到着したが、既に多数の中国本土からと思われる中国人のグループが20メートルぐらいの列を作っていた。大改装を経て2007年にリニューアルしただけあって、館内は広々としていて清潔で、展示ルートも整然としてあり、気持ち良く見学できるようになっている。

 展示品は、まさに中国の至宝と呼ばれるに相応しい、逸品がここぞとばかりに展示してある。欧州、西アジア、北アフリカ系の歴史的品々は在欧時に数多く触れる機会があったが、中国の品々をこれだけの質のものをこれだけの量を観るのは全く初めてで、そのスケールに圧倒される。中国文化については全くの素人で、出発前に少し程の俄か勉強をしただけの私でも、現物の素晴らしさは作品そのものから発せられるオーラで理屈抜きに分かる。

 個人的には中国の書画に興味があったので時間をかけて見学したが、西洋美術とは全く異なる世界観、繊細さと大胆さが同居する描写に感嘆し、書の美しいバランス、書き手の「気」に触れて、思わず姿勢を正すような感覚になった。書画以外にも青銅器時代の青銅器や宋時代からの陶磁器など、中国文明、文化の「美」にただただ驚くばかりである。ここには明らかに私にとって見慣れた欧州、西アジア系の「美」とは異なった極にある「美」があった。現代の中国には必ずしも好感はもっていない私も、この歴史、文化にはかけ値なしで敬意を表したいと思う。

 訪問される方には博物院の学芸員の方による無料のガイドツアーを強くお勧めしたい。残念ながら日本語ツアーはなく、英語と中国語によるものしかないので私は英語のツアーに参加したが、これが素晴らしいガイドさんだった。平易な英語で、博物院の重要展示品の見どころ、歴史的背景を懇切丁寧に解説してくれる。通常の旅行ガイドさんの解説とは明らかにその理解の深みが違っていることは、その説明や質問への回答で良く分かる。申し込み時には1時間から1時間半ぐらいのツアーと聞いたのだが、結局まるまる2時間かけて案内をしてくれた。一つ一つの展示物を観る目が変わってくること間違いない。

 今回の訪問で展示以外のところで驚いたのは、この中国人観光客の多さで、9時を過ぎるころになると、旗を持ったガイドさんの先導の元、20~30人のグループが次から次へと群れをなして押し寄せ、10時半には展示室の前からの行列が階段まで延びるほどになる。特に、有名な展示品の前には、イナゴの大群の襲来のように集まり、1-2分で潮が引くように去ったかと思うと、次のイナゴの大群が集まってくる。そんな感じである。彼らにはこの台北の故宮博物院に所蔵されている名品の数々はどう映るのだろうか?素朴な疑問である。

 展示品は所蔵品のなかのごく一部であるという。確かに展示室や展示品の数は、大英博物館やルーブル美術館に較べればずっと少ない。それでも、半日はたっぷりかけて見学をしたいところであるし、台湾に来たら必ず立ち寄るべきところだろう。

 ※故宮博物院のHPはこちら→
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする