好きなオペラトップ3に入る『ホフマン物語』。現実と幻想が入り混じったホフマン・ワールドが大好きです。私としては初めての東京二期会の公演ということもあり、期待を膨らまして新国立劇場へ。
歌手陣、オケ、演出が其々の持ち味を発揮した素晴らしい舞台でした。個人的な好みとして細かいところで首を傾げるところもありましたが、スタッフ、パフォーマーを合わせたチームとしての集中力、緊張感、気合が十二分に感じられる公演で、オペラならではの迫力と感動を味あわせてくれました。
歌手陣は、ホフマン役の樋口達哉さん、ニクラウス 小林由佳さん、リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥットの四役を演じた大沼徹さんの3名が安定していて、舞台の軸がしっかりしていました。私的には樋口さんはホフマンとしてはちょっと普通人っぽ過ぎてもう少しだらけたところが欲しかったし、加納さんは私のニクラウスのイメージとは異なっていたのですが、二人とも安定した歌唱と演技力が素晴らしかった。更に感心したのは大沼 徹さん。4名のヒール役を見事に演じていて、存在感抜群。彼のおかげで、舞台に厚みが出ていました。
姫3人組は、ジュリエッタ役の菊地美奈さんの艶っぽさに魅かれ、アントニア役の高橋絵理さんは病気で死ぬ人とは思えない大声量の美声が印象的でした。オランピアの佐藤優子さんは、今までで一番人間っぽいオランビアだったけど可愛らしい演技と、声量はもう少し欲しいけど澄んだソプラノに拍手です。
指揮者のミシェル・プラッソンさんは私は初めてですが、東フィルを見事にコントロール。細部の美しさよりも、全体としての掴みを大切にするような指揮ぶりで、東フィルもしっかり応えていました。スケールの大きなホフマン・サウンドに大満足です。ブラッソンさんがしきりにオケを称賛していたのも好感が持てました。
粟國淳さんの演出も良かったです。奇をてらったものではなく、青を基調として、暗めの照明は幻想的な雰囲気が良く出ていたし、シリヤスなところとコミカルなところを上手く使い分けていて、これまた好み。
ロンドンから帰国して丸一年になりますが、今回の二期会といい、これまで何回か行った新国立劇場と言い、期待以上に日本のオペラ公演のレベルが高いのに驚いています。あと、足りないものと言ったら、スター性というか、歌手の華やかさでしょうか?個性がぶつかりあう欧州の公演に比べると、そこだけは見劣りします。ただ、演技の細やかさやオーケストラの安定的な好演は欧州を凌ぐところもありますし、オーケストラ公演よりもオペラの方が楽しみ方はいろいろあるので、そこはじっくりこれから育っていけば良いのでしょうね。
いずれにせよ、好きな作品を期待以上に好演してうれることほど、ファンとして嬉しいことはありません。オペラならではの胸一杯の余韻に浸りながら、初台を後にしました。今年はあと1回しかオペラの予定はありません。12月の新国立劇場の『ホフマン物語』です。次はどんな舞台になるのだろうか・・・
≪今日も四階席です≫
≪夏服でいつもよりリラックスした雰囲気のロビー≫
ホフマン物語
オペラ全4幕
日本語字幕付き原語(フランス語)上演
台本:ジュール・バルビエ、ミシェル・カレ
作曲:ジャック・オッフェンバック
会場: 新国立劇場 オペラパレス
指揮: ミシェル・プラッソン
演出: 粟國 淳
装置: 横田あつみ
衣裳: アレッサンドロ・チャンマルーギ
照明: 笠原俊幸
演出補: 久恒秀典
合唱指揮: 大島義彰
音楽アシスタント: 佐藤正浩
副指揮: 松井和彦
舞台監督: 菅原多敢弘
公演監督: 三林輝夫
8月4日(日)
ホフマン 樋口達哉
ミューズ/ニクラウス 小林由佳
リンドルフ/コッペリウス/
ミラクル博士/ダペルトゥット 大沼 徹
オランピア 佐藤優子
アントニア 高橋絵理
ジュリエッタ 菊地美奈
スパランツァーニ 羽山晃生
クレスペル 大塚博章
シュレーミル/ヘルマン 佐藤 望
アンドレ/フランツ 田中健晴
ルーテル 倉本晋児
ナタナエル 山本耕平
コシュニーユ/ピティキナッチョ 新津耕平
アントニアの母の声 小林紗季子
合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団