その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

津野田 興一 『やりなおし高校世界史: 考えるための入試問題8問』  (ちくま新書)

2013-08-15 04:46:49 | 


 国公立大学の入試の世界史論述問題8問を題材に使って、近現代の世界史を読者と一緒に考える本です。筆者は、都立高校の社会の先生です。

 「うまく出来た本だなあ~」というのが率直な感想です。大学入学試験問題を使うアプローチも面白いし、その試験問題の料理の仕方(解答へのアプローチ)も綺麗に分かりやすく整理されていて、見事です。問題を筆者と一緒に考えることで、読者は歴史上の出来事の関連づけや比較を行い、其々のイベントの歴史的意味合いが理解できます。

 また、筆者は教科書の記述を頻繁に引用して、論述問題の出題意図や解答が、教科書にはどこに書いてあるかを示してくれます。これにより、いわゆる難関国公立の論述問題も、知識としては教科書のレベルで十分であることが分かります。そして、この教科書レベルの知識を、時代や地域をまたいで比較し、一般化・抽象化する力があれば、今世界で起こっている多くのことが世界史の文脈の中で理解することができることが分かります。元外交官の佐藤優氏が『読書の技法』の中で、「世界史の勉強は高校教科書で十分」と言っていたこととも符合しました。

 やみくもに詳細を追うことではなく、全体を大掴みに、歴史的事象の意味合いを自分なりに一般化して理解すること。本書は(学者でない)一般人が歴史を学ぶ意味合いを自然にあぶりだしてくれるものです。お勧めです。

 それにしても、大学入試問題って良くできてますね。
コメント (2)
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