今や知らない人はいないであろうインターネット企業DeNA社の創業者南場智子さんによる自らの起業物語。吸い込まれるように一気に読み切ってしまう。昔、松永真理さんの『iモード事件』を読んだ時と同じようなスピード感を感じ、爽快感が残る。
いろんな読み方ができる。ベンチャー企業論、インターネットビジネス論、リーダーシップ論。ただ、難しいことを考えずに、パワフル女性のベンチャー物語として読むだけでも楽しいし、元気が出る。
私は、インターネットビジネス論として読んだ。インターネットビジネスで成功するために必要な要素がいろいろ詰まっている。徹底的な顧客志向、スピード、秀でた個人に仕事を任せるマネジメント、内製のプログラム開発などなど。この秋読んだアマゾン、アップルなどの成功要因と共通する点も多い。今が旬の企業なので、これからどうなるかも興味深い。
著者の南場さんって、きっと相当な人なのだろう。マッキンゼーでバリバリやって、なんてたってハーバードビジネススクールが楽だったと豪語するんだから。地頭の良さに加えて、努力、根性、体力も満ち溢れており、読んでいて圧倒される。彼女の起業の追体験は面白いが、とても自分に真似ができるものではなさそう。
アマゾンの書評欄には結構厳しいコメントも散見された。ビジョンが無い、事業による社会貢献意識が低く金儲け主義、自社PR本だという類のものだが、ないものねだりに過ぎない気がする。世の起業家たちがそんなに社会貢献を考えてビジネスをしているとは思えないし、社会貢献は事業の結果として得られるものであると思う。確かに自社宣伝トークは沢山混じっているが、これも創業者の我が社可愛さと思えば良い。
ビジネスパーソンなら、読んで決して後悔はしない本である。
★★★★☆