その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

佐渡裕 『棒を振る人生 指揮者は時間を彫刻する』 (PHP新書)

2015-03-28 17:02:40 | 


佐渡氏の著書を読むのは『僕はいかにして指揮者になったのか』(新潮文庫)に次いで二冊目。「棒に振る」をもじって「棒を振る」としたのは著書なりのユーモアなのだろうが、著者の音楽に対する情熱がほとばしっている一冊。

読んでいて、リーダーシップ論の実践編だと思った。仕事(対象)に対する熱意に加え、自分はこうありたい、チームをこうしたいという具体的な思いに満ちている。

日本と欧州のオーケストラの違いを説明している件も興味深かった。佐渡氏は違いは色彩感に現れるという。日本のオーケストラの音は欧州に比べて色彩感に奥行きがない。これは浮世絵、風呂敷、歌舞伎の舞台セットに現れるような日本の平面文化にあるという。音楽祭のテープオーディションの際に、演奏だけを聞いて7-8割がたその演奏家の出身地や性別などを当てることができたという程、地域、民族による違いがあるらしい。

佐渡氏は今年の秋からウイーンのトーンキュンストラー管弦楽団の芸術監督に就任する。最終章では、オケからオファーを受け決断したエピソード、そしてこれからのプランも書かれていて、氏のこれからの活躍に期待が募る。是非、早く日本公演を実現させて欲しい。
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