その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

アベ・プレヴォー 『マノン・レスコー』(新潮文庫)

2015-03-21 10:21:33 | 


 新国立劇場に本作をオペラ化したプッチーニの『マノン・レスコー』を観劇予定なので、その予習として原作を読んでみた(と書き始めるつもりだったのが、前日になってその日の出勤が決定。なんてこった!)。もっとも、同じ話をオペラ化したマスネ作曲の『マノン』を以前見ているので、話しの筋はだいたい頭に残っている。邦題は「マレン・レスコー」だが直訳は『騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語』である。

 過去に観た『マノン』のオペラは、アンナ・ネトレプコとヴィットリオ・グリゴーロという超豪華スターの共演だったこともあり素晴らしい舞台だったのだが、物語としては「金とモノに目がくらんだ、賢いとはいえそうにないとある女性の一生」(当時のブログ記事より)という印象しかなかった。今回、初めて原作を読んでみたが、視点こそオペラにおける女性視点から男性視点で描かれているものの、物語の印象は「良家のお坊ちゃま君が娼婦に手玉に取られるしょうもない話」に終始した。

 もっとも作品紹介によると本作は「フランスのロマン主義文学の傑作」とのことだから、私の感想は男女の純愛を理解しない色気のない中年オヤジのひがみというところなのだろう。一人の女性しか見えなくなった若き男性の愛の回想は読んでいて恥ずかしくなるし、自分がもう若くはないことをこれでもかという程、思い知らせてくれる。作品の雰囲気は、娼婦と良家のおぼちゃっま君の恋愛物語という意味で、デュマの『椿姫』と全くもって似ている。(もっとも私が『椿姫』を先に読んでいただけで、文学史的には『椿姫』で『マノン・レスコー』が引用されているように、『マノン・レスコー』が先鞭をつけている)

 さあ、どんなに物語とは反りが合わなくても、オペラが好きか嫌いかは全く別物というのが今までの経験則だったので、プッチーニがどんな音楽を付けて捌くのか楽しみだったのだが、今回の機会を逃した私がこのオペラを観ることができるのはいつになるのだろうか?
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