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なかなか刺激的なタイトルです。図書館の新刊棚に置いてあるのを見つけ、迷わず手に取りました。多くの日本企業がグローバル競争の中でかつての存在感や輝きを失っている中で、「日本企業は何を強みにどう変わらなければいけないのか?」「欧米流の真似しかないのか」が、大きな関心事である自分にとって、タイミングを得た一冊に見えました。
筆者は1932年生まれということですから80歳を超えた学者さんです。インタビューによる1次資料をベースとした調査は体力的に困難と自ら認めつつも、2次資料を利用した調査は学者らしい真摯な探求心と強い問題意識がうかがわれます。
本書で言うところの「日本企業の強み」とは「企業の長期の競争力を重視する慣行」のことです。コンビニエンスストア、ソフトウエアの技術者、投資銀行などを取り上げて、主に競争力の源泉となる人材(育成)を中心に長期的な視点の重要性について論証します。
最終章では、長期の視点を経営に取り入れるために2つの対策が示されます。一つは長期の株主の重視であり、もう一つは役員会へ従業員代表者を参加させることです。欧州での具体的導入事例や制度設計についても触れています。
ただ、私のような実務家には、議論のレベル感が高く、現実感が伴わない印象を受けたのは正直なところです。最終章で示された対策が、日本企業の強みを取り戻すことになるかも、どうも腹落ち感はもう一つでした。
引き続き、自分なりに考えていきたいテーマです。
(目次)
第1章 長期の競争の重要性
第2章 コンビニエンス・ストアの革新
第3章 ソフトウエアの技術者たち
第4章 生産ラインの設計と構築
第5章 投資銀行とヘッジファンド
第6章 企業の統治機構
第7章 長期の競争の要件