私にはこれまであまり馴染のなかった画家であるが、ボローニャの所縁の画家ということを知り出かけてみた。ボローニャは、2011年に訪れて、大都市でありながらその落ち着いた佇まいがとっても気に入った街であったから。
今回の展示作品の多くは、ボローニャ近郊のチェント市の市立絵画館から借用したものである。そのチェントは2012年5月に大地震に襲われている。市立絵画館はいまもって閉館したままで、復旧のめども立っていないとのことだ。本展は震災復興事業でもあり、収益の一部は絵画館の復興に充てられるらしい。私の入場料などはたかが知れているが、少しでも貢献できるなら、来てよかったと思った。
展示の方は、期待を上回る充実した内容だった。グエルチーノは17世紀に活躍したイタリア・バロック美術を代表する画家である。19世紀半ば以降評価を落としたが、20世紀半ば以降再評価されているとのこと。
祭壇画で使われたのであろう宗教画中心の作品群は、大型で迫力ある。教会を意識したのか、会場の照明も随分落としてあり、厳かな雰囲気に包まれていた。40数点の展示であるが、一枚一枚が大作なので、鑑賞に時間もかかるしエネルギーがいる。
「イタリア・バロック美術の代表的画家」と言われても、私にはルネッサンス期の絵とどう違うのかは、正直、分かりかねる。個人的には、《聖母のもとに現れる復活したキリスト》などの宗教画も良いが、もう少し世俗的な《放蕩息子》とか《スザンナと老人たち》などの作品の方が好みである。《狩人ディアナ》も美しかった。
グエルチーノ 《聖母のもとに現れる復活したキリスト》1628-30年 油彩/カンヴァス 260×179.5cm チェント市立絵画館
グエルチーノ《放蕩息子の帰還》1627-28年頃 油彩/カンヴァス 125×163cm ローマ、ボルゲーゼ美術館
グエルチーノ 《スザンナと老人たち》1649-50年 油彩/カンヴァス 132.5×180cm パルマ国立美術館
会場は空いていてゆっくり鑑賞できた。確か、ボローニャの国立美術館もガラガラだったことを思い出した。好みは分かれるかもしれないが、バロック美術や古典的作品が好きな人には、お勧めできる美術展だ。