『ダビンチ・コード』で知られるダン・ブラウン氏の処女作。職場で同僚が廻し読みをしていたので、仲間に入れてもらいました。世界の通信を解読している米国国家安全保障局(NSA)に対して仕掛けられた暗号解読不可能な暗号ソフトを巡る争いを描いたサスペンス小説です。『パズル・パレス』とは小説の舞台となる国家安全保障局のニックネーム。原題は「Digital Fortress」(デジタル要塞)は、NSAに仕掛けられた暗号ソフトの名前です。
私が過去に読んだ『ダビンチ・コード』や『インフェルノ』に比べると、洗練さという点では劣るところはありますが、ドキドキ、ハラハラの連続で、読み始めたら止まらない吸引力は処女作から健在です。
一時期、エシュロンやドイツのメルケル首相の盗聴問題等で米国の諜報活動が話題になりましたが、その活動の一部を、小説としてのフィクッションの形ではあるものの、リアリティに溢れ、背筋が寒くなります。
また、個人のプライバシーと世界平和のための情報管理・統制は、どちらが優先されるべきなのかという普段は観念的にしか考えないような問いについても立ち止まって考えてしまうところも出てきます。
いずれにせよ、私のような一市民は、このデジタル社会の中で守れるプライバシーなどは無いということを前提にしたほうがよさそうです。
暗号技術など多少IT関連の知識があったほうが分かりやすいところもあるかもしれませんが、無くとも楽しめます。読んで、後悔しない作品です。