
イギリスの船乗りマーロウが、コンゴの奥地で象牙貿易に従事する謎のスゴ腕社員クルツの救出に現地に向かう。その過程での様々なマーロウの体験を描いた物語です。先月読んだ松岡正剛氏の『誰も知らない世界と日本のまちがい』に紹介されていたので手に取ってみました。(ただ、松岡氏の紹介は、クルルの体験談のような書き方がされていますが、実際の内容は全く違っています・・・(^_^;))
本書は、欧米の帝国主義が食い物にしたアフリカを白人の視点から描写した小説として有名な作品のようです。確かに世界史的観点から批判的に読むことは一つの本書の読み方だと思います。ただ、私はそうした社会的側面よりも、作者の細やかな心情描写、人間洞察、情景描写に現われた文学的な奥深さに魅かれました。映画を見るように、各エピソードの風景、登場人物の心情が目に浮かび、胸に響きます。
この物語を現地のアフリカ人の立場で描くとどうなっていたのか?を考えると、暴力装置としての帝国主義の酷さに憤りを感じるのは自然です。ただ、現代に生きる我々としては、昨今の韓国との従軍慰安婦議論然り、歴史として受け止め、これからの教訓とするしかないのではと思います。
色んな読み方ができる本であり、受け止めは人其々と思いますが、誰もが「読む必要がなかった」とは思わせることはない作品であることは間違いありません。