その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

無名アイドルにあって、N響になかったもの: N響 10月定期Aプロ/ 指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ/ ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」 他

2016-10-17 23:12:52 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

《NHKホール前は今日もフェスタ》

 10月のAプロはロシアプログラム。指揮のヴェデルニコフさんは、一昨年の1月以来、2年ぶりです。

 この日、私的にベストだったと思ったのは、前半のグラズノフ/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏のグルズマンさんは初めて聴きましたが、力でぐいぐい押すスタイルとは正反対で、曲の抒情性を自然と引き出す音色でした。ロシアの田舎の夕暮れの風景が目に浮かぶような哀愁漂う演奏にうっとり。オケもヴァイオリンを引き立てる滑らかな演奏で、全体の調和が素晴らしい。アンコールではバッハのサラバンドを演奏してくれました。決して大きな音ではないのですが、あの大きなNHKホールが小さく感じるぐらいの豊かな響きが伝わって来て、教会で聴いてるかのような神々しさまで感じるものでした。彼の演奏は一度、小さなリサイタルホールで聴いてみたい。

 後半のストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」は、ロシア出身のヴェデルニコフさんの指揮ということもあり、大いに期待していましたし、最近の好調なN響をそのままで、素晴らしい演奏でした。難しい曲だと思うのですが、アンサンブルは乱れなく、管楽器の音色も聴かせます。が正直ななところを書くと、「何か物足りない」。そんな印象を持った演奏でした。あまりにも端正で、お行儀よく、機能的な演奏で、私がこの曲に求めたい興奮、陶酔、狂気、汗、血が感じられない。綺麗に目の前を流れていく音楽を聴いていて、もっと乱れてくれ!行かせてくれ!と心の中で叫ぶ自分がいました。ただ、終演後にどのツイッターを目に通しても、こんな感想を呟いている人はどこにもいませんでしたので、万年音楽素人の私の妄想の可能性大です。
 
 もしかしたら、NHKホール周辺で開催されていたフェスティバルで踊って歌っていた無名アイドル達のミニコンサートの残像があったのかも。アイドルには全く興味・関心のない私ですが、たまたま早めにホール周辺に到着したので、興味半分で眺めていたのですが、思いのほか強く魅かれるものがありました(ステージ前に陣取って、掛け声かけてる男性陣にはかなり引いたけど)。テープ音楽をバックにしたカラオケで、歌も踊りもプロというにはもう一歩なのですが、彼女たちが放つ無条件の若さ、勢い、エネルギーは眩しいほど(こんなこと書いていること自体が、もうオヤジ丸出しですが)。クラシック音楽のコンサートと無名アイドルのステージを比べること自体、プロのクリケットと少年野球を比べてるようなものだと思いますが、クラシック音楽にもああいう「はじけ」ってあってもいいよねと真面目に思います。特に、この日はハルサイなんだし・・・。

 演奏に文句は全くないのだけど、個人的に十分満足とは言い難い、不思議な思いを持った演奏会でした。


《SPORTS of HEART 2016 @代々木公園野外ステージ》


《納豆フェスタ 特別ステージ》


N響 第1844回 定期公演 Aプログラム

2016年10月16日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

チャイコフスキー/スラヴ行進曲 作品31
グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品82
ストラヴィンスキー/幻想曲「花火」作品4
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」


指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ
ヴァイオリン:ワディム・グルズマン


NHK Symphony Orchestra
No.1844 Subscription (Program A)
Sunday, October 16, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Tchaikovsky / Slavonic March op.31
Glazunov / Violin Concerto a minor op.82
Stravinsky / “Feu d’artifice”, fantasy op.4
Stravinsky / “Le sacre du printemps”, ballet

Alexander Vedernikov, conductor
Vadim Gluzman, violin
コメント
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