
徳川御三家のひとつである水戸藩の第2代藩主、水戸光圀の一生を追った物語。破天荒な青年期、大義を貫く壮年期、藩政・修史事業に取り組む中年期、そして隠居の晩年。骨太な筆致で、文武に秀でた傑物が描かれる。
700ページを超える大作で、中盤以降やや中だるみ感や冗長な印象もあったが、終盤に緊張の山場が設けられおり最後はしっかり締まった。水戸藩の将来の布石にもなっている。戦国の世から太平の世へ、時代の移り変わり期における武士階級の最上流の偉人の生き様は、静かな興奮を伴って読める。
作者は奥さんへのDVで逮捕されたことでニュースになった(本人は否定しており、結局不起訴処分になっているらしい)が、高潔な歴史上の人物を描くことと、個人の人間性はどうも相関しないようだ。