年末の第九ぼったくり商法については、かねてより批判的であるので、ささやかな個人的不買活動を継続中である。加えて、年末は第九よりもバレエの方がぴったりくると思っており、ここ数年、新国立バレエの公演を楽しみにしている。この季節は1年交代で「シンデレラ」と「くるみ」を上演してくれており、今年は「シンデレラ」の年。過去2回、米沢唯さんのシンデレラを観てきたので、今年は小野絢子さんのシンデレラを選んだ。
この日はチケット完売。着飾ったお子様たちが大勢交じり、ホワイエは実に華やかな雰囲気に包まれる。入口手前のクリスマスマーケット風のテントやホワイエの大きなクリスマスツリー、ピエロが風船人形を子供たちに配ったり、舞台だけでなく劇場そのものが夢の中のようだ。
公演は、絢子シンデレラの素晴らしい踊りに魅了され続けた。均整が取れ、かつ優美な動きに加えて、表情が何とも可憐。私自身は、もう夢の世界に浸る歳ではないけど、現実からは確実に逃避させてくれ、別の世界に連れて行ってくれる。バレエって本当に不思議な力がある。
絢子姫のほかには、仙女役の木村優里さんが柔らかな動きに目を奪われた。手足がとっても細くて長く、千手観音に見えたぐらい。秋の精を演じた新人の池田理理沙子さんは、公演後に知ったが、最近SNS上で賛否両論のホットな話題になっているようだ。私は、そんなことはつゆ知らずに観てたけど、バレエ観劇素人ながら、私自身は4名の精のなかで、表情豊かだし、踊りも個が浮きだつ感じで、好感度高かった。批判にめげずに頑張ってほしい。
あと、良いなと思ったのは、昨年の「くるみ割り人形」公演では、あらすじすら配られず、プログラムを買わせようとする「年末ぼったくり商法、新国おまえもか!」と言いたくなっただけど、今年はしっかりしたプログラムを入口で配って頂き、とっても満足。初めてバレエを見に来る子供たちも沢山いるんだから、こういうことは大事だと思う。
気持ちよく1年を締めくくるには、バレエが一番だと改めて確認した。
【12月23日(金・祝)18:00】
シンデレラ:小野絢子
王子:福岡雄大
姉娘:小口邦明
妹娘:宝満直也
仙女:木村優里
春の精:五月女 遥
夏の精:飯野萌子
秋の精:池田理沙子
冬の精:細田千晶
芸術監督:大原永子
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:フレデリック・アシュトン
監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス/マリン・ソワーズ
装置・衣裳:デヴィッド・ウォーカー
照明:沢田祐二
指揮:マーティン・イェーツ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
《英国ロイヤルバレエで1987年アシュトン版初演時のポスター》